2010年12月14日(火)「しんぶん赤旗」

政府の戦争犠牲「がまん」答申30年

国家補償求めシンポ


 「戦争の犠牲はすべての国民ががまんせよ」と政府の原爆被爆者対策基本問題懇談会(基本懇)が答申してから30年を受けたシンポジウムが12日、東京都内で開かれました。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の主催です。今も続く政府の姿勢を批判し、被爆者運動の課題を討論しました。130人が参加しました。


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(写真)「戦争被害をがまんせよ」との答申から30年のシンポジウムで、答申に抗議する当時の「被団協」新聞をかかげる濱谷氏(中央)=12日、東京都内

被爆者らが訴え

 原爆被害への国家補償を求める被爆者らの運動におされて設置された基本懇は1980年12月、答申で「およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民がその生命・身体・財産等について、その戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても…『一般の犠牲』として、すべての国民がひとしく受忍しなければならない」と「受忍論」を押し出して国家補償を拒否しました。

 「受忍論」は空襲犠牲者はじめ一般戦災者への国家補償を拒む根拠にもなっています。

 シンポでは被爆者や専門家ら4人のパネリストが報告しました。

 一橋大学名誉教授の濱谷正晴氏は、基本懇の13回(1年半)の議事録を紹介。一般戦災者などに国家補償が波及しないよう歯止めをかけることに論議の中心が置かれ、原爆被害から目をそらしたと告発しました。

 日本被団協の田中熙巳事務局長は、13歳のとき長崎で被爆し、5人の身内を失ったときの状況を克明に話し、執念をもって「受忍論」を追及してきたと語りました。

 内藤雅義弁護士は、欧州では戦争被害への補償が確立しており、「日本の戦後補償は世界の非常識だ」とのべ、憲法にてらせば「受忍」は当たり前ではないと訴えました。

 九州大学大学院准教授の直野章子氏は、「受忍論」の法的根拠はなく政治論だと指摘し、国家が「受忍すべき被害」を創出していると指摘しました。





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