2010年12月10日(金)「しんぶん赤旗」

北東アジアの緊張の下で

過去最大規模の統合実動演習

刃研ぐ 米軍・自衛隊


 3日から10日まで行われている日米共同統合実動演習(キーン・ソード=鋭い剣)。急速に進む米軍・自衛隊の一体化を誇示し、周辺諸国に脅威を与えています。(竹下岳)


中朝「仮想敵」に

 「以前から計画していたものであり、現実の事態を想定したものではない」。米軍・自衛隊幹部は報道陣の質問に対して、一様にこう答えます。

 尖閣諸島問題や北朝鮮による韓国砲撃など、北東アジアが緊張状態にある中で、過去最大の約4万5千人が参加する実動演習が行われるのですから、当然の疑問です。

 以前から計画しているのは事実ですが、もともと中国・北朝鮮を事実上の仮想敵にしているのが実態です。また、日米が想定する“脅威”に対して、より実戦的になっているのが過去最大規模に膨れ上がった大きな要因と見られます。

 九州沖では、米原子力空母ジョージ・ワシントンと強襲揚陸艦エセックスという巨艦がほぼ同海域に展開し、日米で20隻以上の艦船がそろいました。米側の発表によれば、エセックスには自衛官も乗り込み、海兵隊部隊から強襲上陸作戦の指導を受けています。「中国の海洋進出」を想定した動きといえます。

 北朝鮮を想定した「ミサイル防衛」(MD)訓練では、日本海で、弾道ミサイルを迎撃するスタンダードミサイル・SM3を搭載した日米のイージス艦がそろい踏み。沖縄では、地上配備のパトリオット・PAC3を、公道を使って移動。ふだんはできない訓練を強行しています。

 また、アフガニスタン情勢が泥沼化するなか、「対テロ」を想定して自衛隊基地での警護訓練が大規模に行われたのも今回の大きな特徴です。

◎……◎

 「日米間の政治レベルでの関係は最悪だが、米軍は自衛隊を強く信頼している。日米同盟はMM(軍―軍)関係で支えられている」。森本敏・拓殖大大学院教授はこう指摘しました。(4日、横浜市内のシンポジウム)

 菅政権が主張する「同盟深化」の出発点は、2005年10月の在日米軍再編の報告書「日米同盟―未来のための変革と再編」です。同報告は、(1)米軍・自衛隊の一体化(2)沖縄を中心とした米軍基地の再編―の2本柱から成り立っています。

 このうち、米海兵隊普天間基地の沖縄県内「移設」は県民のたたかいで追い詰められました。有効な手だてを打てない民主党政権への米側の不満が高まる一方、日米の軍事的な連携強化は粛々と進んできました。今回の実動演習は、その到達点をアジア諸国に示す結果になりました。

 普天間基地問題という矛盾を抱えつつ、剣の刃(やいば)を研ぐ米軍・自衛隊。日米同盟の現状を注視する必要があります。

小松

 航空自衛隊小松基地(石川県)を拠点に、日本海上空で自衛隊のF15戦闘機と米空軍三沢基地(青森県)所属のF16戦闘機による対空演習。6日には在日米軍のフィールド司令官と折木良一統合幕僚長が視察。

舞鶴

 米ミサイル巡洋艦シャイロー、ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド、海上自衛隊護衛艦「みょうこう」「くらま」が日本海を中心に、北朝鮮を想定した「ミサイル防衛」(MD)演習を実施。このうち、シャイローと「みょうこう」は弾道ミサイルを迎撃するスタンダードミサイル・SM3を搭載。

九州・沖縄近海

 「島嶼(とうしょ)防衛」などを想定した演習には、沖縄の第31海兵遠征隊(31MEU)と佐世保基地(長崎県)の強襲揚陸艦エセックスや他の掃海艦、佐世保の第2護衛隊も参加。海自幹部がエセックスに乗り込み、東シナ海で31MEUから強襲上陸訓練を受ける。

沖縄

 写真は4日、ホワイトビーチに集結する米強襲揚陸艦エセックス(左)や海自の掃海艦(右)など。嘉手納基地所属の「ミサイル防衛」(MD)部隊が運用するパトリオット・PAC3は公道を通って沖縄本島中部から北部に展開。那覇基地は自衛隊F2戦闘機などの飛来で騒音が激増。嘉手納には米原子力空母ジョージ・ワシントンの艦載機が飛来。

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