2010年12月5日(日)「しんぶん赤旗」

主張

菅政権の農業「改革」

TPPテコにした農業つぶし


 菅直人政権が、農産物市場の全面開放に備えた農業「改革」を加速させています。編成中の来年度予算案にも反映させながら、来夏に基本方針をまとめる予定です。環太平洋連携協定(TPP)への参加を前提に、日本農業の姿を変えるものです。

従来の農政見直しを

 菅首相は、市場開放を不可避とし、農業の発展と「両立」させることを「改革」の建前としています。一方では、農業人口の高齢化などをあげて日本農業の衰退を強調し、規制で身動きがとれないかのように描いて、「改革」しなければ、TPP参加にかかわりなく農業に未来がないといいます。

 ここにはごまかしがあります。歴代の自民党政権は市場を次々に開放し、輸入食料への依存を強めてきました。日本の農産物関税率は平均して他国に比べ低く、市場はすでに大きく開かれています。

 政府は、農業予算を年々減らし、価格保障政策や農家経営安定化策を放棄してきました。農業者には、国際競争力をつけさせるとして規模拡大を押しつけ、中心的な担い手である家族経営を切ってきました。

 若い世代を農業から遠ざけてきたのは、農業経営を成り立たなくさせたこうした農政です。日本農業の発展をいうなら、従来の農政の抜本見直しこそ不可欠です。

 ところが、いま菅政権が大車輪で推進するのは自民党農政と同じ路線です。全面的に開かれた市場で輸入品と競争し、輸出もできるよう、経営の大規模化をはかるというのです。しかし、狭小で山がちな国土の条件からも、広大な農地を使った米国などの大規模経営と対抗するのは無理があります。

 政府が規模拡大の手段の一つとするのが、来年度からの導入を検討している規模拡大に応じた戸別所得補償の加算金です。今年度から始まった戸別所得補償は小規模経営も対象にしています。背景には、圧倒的多数の農家が生産費さえ賄えない現実があります。

 戸別所得補償は、大規模化の手段とされることで、性格を変えざるをえません。同制度の予算総額は概算要求から増やさない方針ですから、小規模経営切り捨てにつながりかねません。

 昨年改悪されたばかりの農地法の再改悪も浮上しています。菅首相は、農地法が若い人の参入の「制約」になっていると攻撃します。これもごまかしです。農地取得が制限されているのは株式会社です。もうからなければ農業から撤退したり、投機や他用途転用などの恐れがあるからです。

 農業経営の効率化に施策を集中して小規模経営を淘汰(とうた)することも、株式会社に自由な農地取得を認めるのも、財界が要求してきたものです。TPPも輸出大企業の利益になるとして、財界が旗を振っています。

農業再生の運動強めて

 日本農業に壊滅的打撃を与えるTPP参加と、日本農業の発展とは両立しません。菅政権がめざすのは、「黒船来襲」に見立てたTPPの衝撃を利用して、日本農業に残る規制を財界の意図に合うよう取り払うことです。

 TPP参加に向けた菅政権の農業「改革」に待ったをかけるとともに、日本農業の再生に向けた世論と運動を大きく発展させる必要があります。





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