2010年11月24日(水)「しんぶん赤旗」

主張

NATO首脳会議

“前世紀の遺物”延命はかる


 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が、同機構の基本文書である新たな「戦略概念」を採択しました。「21世紀の安全保障上の課題に取り組むのに適した同盟」をめざすとしています。

 世界の軍事同盟は、NATOと対抗したワルシャワ条約機構をはじめ、多くが前世紀中に活動を停止しました。唯一残った多国間軍事同盟がNATOです。首脳会議の決定は、加盟国が攻撃を受ける可能性が低くなるなか、軍事同盟を無理やり延命させる試みです。世界規模で軍事力行使の可能性を探るもので、軍事同盟こそ平和を脅かすことを示しています。

国連憲章と相いれない

 NATOは現在、アフガニスタンに13万人もの大軍を展開しています。首脳会議は、治安権限のアフガン政府軍への移譲を来年開始し、2014年に終えるとしました。NATOの軍事作戦は9年以上もアフガン市民に犠牲を強いてきたのに、今後4年も続けるというのです。それも「条件次第」で「撤退ではない」というから、「出口」が見えない戦略です。

 戦争は泥沼化し、タリバンの攻勢で戦況が悪化しています。テロを軍事力で押さえ込もうとすることが誤りです。報復の連鎖を招く軍事力行使はやめるべきです。テロには、国連が主導し、国際協力によって法の裁きを確保すべきです。テロの温床である貧困や不正義を正すことも不可欠です。

 NATOは、01年に米国で起きた同時多発テロ直後、NATO史上初めて集団的自衛権を発動し、アフガンに侵攻しました。これは、国連憲章が集団的安全保障の措置として認める、国連のもとでの平和の回復のための軍事的強制措置とは別物です。

 軍事力行使を柱とする軍事同盟は、国連憲章がうたう平和の世界秩序とは相いれません。首脳会議が採択した「戦略概念」「リスボン宣言」の2文書がともに国連憲章の諸原則に従うとしているのは、自らの存在が国連憲章に反することをごまかすだけです。

 NATOがアフガン戦争で踏み切った域外活動を一段と重視し、「全面的な能力を保有する」としていることは重大です。

 首脳会議は、オバマ米大統領が打ち出した「核のない世界」の目標にふれながら、NATOは「核同盟」だとして、核兵器に固執する姿勢を鮮明にしました。

 NATOが想定する脅威には、テロとともに核兵器の拡散があります。ロシアを交えて合意したミサイル防衛網の構築は、イランの核武装に備えるものです。しかし、イランが現時点で核兵器を保有しているわけではありません。

 イランの核兵器開発を阻止するうえでも、なにより必要なのは、核兵器の廃絶に向けて国際社会の結束を強めることです。それに背を向け、自らは「核同盟」だと公言する姿勢は、それこそが核拡散を刺激する危険なものです。

破たんまぬがれず

 米国と欧州各国はいずれも財政支出の削減を迫られています。欧州を覆うミサイル防衛網の構築にも多大な費用がかかります。それは、国民生活を犠牲にして軍事産業を潤すものです。

 軍事同盟は、その存在自体が時代遅れです。“前世紀の遺物”を延命させる試みは、矛盾を拡大し、破たんをまぬがれません。





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