2010年10月28日(木)「しんぶん赤旗」

「武器輸出三原則」見直し

米・財界圧力に民主が呼応


 菅政権は、日本の軍事力のあり方などの基本的指針を示す新「防衛計画の大綱」を年末に策定するための作業を進めています。これに合わせ、政府・民主党内や自民党では、憲法の平和原則に基づき武器輸出を原則禁止した「武器輸出三原則」の見直しの動きが強まっています。

自民も後押し

 26日、民主党の外交・安全保障調査会は役員会を開き、武器輸出三原則の見直しについて検討し、11月に提言をまとめることを決めました。

 三原則見直しについては、北沢俊美防衛相が、今年1月に開かれた軍需企業の会合で「検討」を約束して以降、積極的な考えを繰り返し表明し、国会などでの議論を呼びかけていました。菅政権も22日、新防衛計画大綱の策定過程で「三原則を取り巻く状況の変化を考慮しつつ、その扱いについて議論していく」との答弁書を閣議決定。関係閣僚による協議を始めています。

 一方、自民党は14日の参院予算委員会で猪口邦子議員が三原則見直しを迫り、菅直人首相から「しっかりと(議論を)やっていきたい」との答弁を引き出しました。22日閣議決定の政府答弁書も同党の山谷えり子参院議員の質問主意書に対するものです。

 こうした見直しの動きが強まったきっかけは、新防衛計画大綱の策定に向けて設置された首相の私的諮問機関「新たな時代における日本の安全保障と防衛力に関する懇談会」が8月下旬に提出した報告書です。同報告書は「日本だけが武器輸出を禁じることが世界平和に貢献するという考えは一面的」などと三原則を攻撃。日本の軍需企業が武器の「国際共同開発・生産」に参入できるように「原則輸出を可能とすべき」だと求めました。

もうけを創出

 武器輸出の解禁は、アメリカ政府や日米財界の強烈な要求です。

 11日のベトナム・ハノイでの日米防衛首脳会談では、ゲーツ米国防長官が三原則見直しを「大いに歓迎したい」と表明。8日には日米財界人会議(日本側議長・米倉弘昌日本経団連会長)が、軍需企業の「国際共同研究開発」への参加のため三原則見直しを求める共同声明を採択しました。

 「国際共同開発」として具体的に狙われているのは、航空自衛隊への導入を検討しているF35戦闘機の国際共同開発に日本が参画することや、日米が共同開発中の弾道ミサイル迎撃用ミサイルSM3ブロックIIAの第三国供与を可能にすることです。日本と世界の軍拡、日米軍需企業の新たなもうけ口の創出を狙ったものです。

 これまで、三原則を持つ日本は武器を輸出せず、武器輸出を前提にした軍需産業もないことから、小型武器の規制といった分野で国際社会をリードする役割を果たすことができました。その見直しは、軍需企業の目先の利益にとらわれ、世界的な軍縮の流れに逆行することになります。(洞口昇幸)


 武器輸出三原則 1967年に当時の佐藤栄作首相が、(1)共産圏諸国(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国(3)国際紛争当事国、その恐れのある国―への武器輸出を認めないと表明。76年に政府統一見解として67年の三原則対象地域外への武器輸出も慎むとし、日本の武器輸出は原則禁止となりました。「武器」には武器技術も含まれます。





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