2010年10月24日(日)「しんぶん赤旗」

主張

司法修習給費制

「市民の法律家」養成のために


 “法律家の卵”である司法修習生に国が給与を払う「給費制」の継続をめぐり、重大な局面を迎えています。

 「給費制」廃止と、それに代わる「貸与制」への移行の期日である11月1日を前に、「金持ちでなければ法律家になれない制度でいいのか」という世論と運動が広がりました。与野党を超えて「給費制」継続の動きがすすんだにもかかわらず、自民党がこれに応じない方針を決めるなど、頓挫しかねない状況になっているのです。

資力なければすすめぬ

 「給費制」の維持は当の司法修習生にだけでなく、日本の法曹のあり方にとって重大な問題です。見直さないと簡単に決めていい問題ではありません。

 司法試験合格後の1年間、裁判所や検察庁、弁護士事務所などで実務研修を受ける「司法修習」の期間、これまでは給与が支払われてきました。2004年12月の国会で、日本共産党だけが強く反対するなか、裁判所法一部「改正」による「給費制」廃止が強行され、施行期日を11月1日に迎えます。

 法「改正」後の6年間で、法曹養成制度の大変革がすすみました。幅広く、質の高い法律家を育てようと、法科大学院制度が始まりました。ここで原則3年間学んだ人たちが司法試験の受験資格を持つという仕組みが、実は、新たな経済的負担となっています。

 世界一学費の高い日本で4年制の大学を卒業した後、さらに法科大学院で学ぶための費用はきわめて高額になります。現状でも、修習生の半数以上が奨学金などの借金をかかえ、その平均は318万円、なかには1千万円を超える人もいるほどです。「給費制」が廃止されれば、その間の生活費約300万円の借金が上乗せされます。多彩で、幅広い人材を法曹に受け入れるどころか、資力のある人しかなれないという制度的問題が生まれることになります。

 いま日本の司法は大きな改革の時期を迎えています。裁判員制度が始まり、検察審査会の権限も拡充されました。「裁きはお上がなさること」という日本に根強い裁判文化を打ち破り、国民の良識を生かし、市民が参加する司法へ大きく踏み出すときです。

 そうしたときに、ただ国の財政の都合だけで、金持ちでなければ法律家になることができないような新たな障壁をもうけることは、「市民の目線に立つ法律家」の排除につながりかねません。あまりに近視眼的で、国民の権利と利益を損なうものです。「受益者負担だ」などという理屈で、これを合理化することは許されません。

憲法と人権守る法曹を

 日本共産党は、憲法と人権を守り国民に信頼される法曹を育てる法曹養成制度とするため、法科大学院生や修習生への経済的援助を拡充することを求めています。

 「給費制」存続を求め、市民と法律家が手をたずさえたこの間の運動では、若手の弁護士、司法修習生、法科大学院生らがそろいのTシャツを身に着け訴える姿が目を引きました。彼ら、彼女らが口々に語った「市民の権利を守る法律家になりたい」という言葉は、司法改革の今後への大きな希望です。

 この希望を未来に生かすために、今こそ国会の各党各会派は知恵を絞り、今国会での「給費制」存続を実現すべきです。





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