2010年10月22日(金)「しんぶん赤旗」

国連環境計画の報告

保全と両立する経済目指す


 20日公表された「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)の最終報告「自然に関する経済学の主流化」は、生態系破壊が人類にどれほど大きな影響をもたらすかを、金額として数値化することなどにより、生物多様性保全と両立する持続可能な経済を目指そうとするものです。

 報告を発表した国連環境計画(UNEP)のスクデフ氏(TEEB研究リーダー)は、この研究の目的として、自然に関する経済学の「主流化」や「可視化」という言葉を繰り返しました。そこにあるのは「外部不経済の内部化」と呼ばれる考え方です。

 生態系が人間に及ぼす恩恵(生態系サービス)や、人間の経済活動が生態系などの環境に及ぼす負荷は、これまでは経済活動では「タダ」のものとして扱われてきました。しかし、それでは持続可能な発展は不可能だとし、市場経済に組み込もうというのが、「外部不経済の内部化」という考え方です。

 地球温暖化の経済的影響を考察したスターン報告(2006年発表)では、早めに対策をとることで経済的負担は小さくて済むという、命題を打ち出し、温暖化議論に大きな影響を及ぼしました。

 「スターン報告の生物多様性版」をめざすTEEBも、08年に発表した中間報告では、「何も対策をとらない場合の生態系の損失は、50年間で2兆〜4・5兆ドルに達する」と指摘。早期に対策をとった方が経済的だと呼びかけています。

 今回の報告で改めて注目されるのは、このように人間の経済活動の生態系への負荷を「見える化」することにより、生物多様性保全にとって企業の役割が大きいと強調している点です。

 報告は、今年4月にメキシコ湾で起こった海底油田原油流出事故に言及。「アグリビジネス(農業を中心とした関連産業の総称)や林業、漁業と比べて生態系サービスにほとんど依存していなかった石油企業が、沖合での石油掘削による環境破壊に直面し、市場価値を暴落させた」と述べ、企業の活動が生態系保護に深く結びついていることを警告しています。

 特に鉱業と生物多様性保全の関連を詳しく検討。企業の活動などが生態系から受ける恩恵や生態系に及ぼす悪影響についての情報提供、生態系の価値の認識から始め、生物多様性保全の措置をとるよう呼びかけています。(坂口明)





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