2010年10月15日(金)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 通勤途上の道端に転がる木の実が、もう朽ちています。ドングリでも、コナラは細長く、クヌギはまるい。ケヤキの実は、豆粒のように小さい▼平地では無理ですが、山深いところへ行けばブナの実を探します。小粒ながら美味です。酒のさかなにする人がいるほどです。しかし、拾うときは黙ってあいさつします。“クマさん、悪いね”と▼クマは、木の実のなかでもブナが大好き、といいます。クマにとっても、極上のおいしいえさなのでしょうか。残念ながらというべきか、幸いというべきか、クマが食べている現場はまだみていません▼「むらさきの木の実熟れたり熊たちに」(堀口星眠)。歳時記に載っている句です。しかし、ことしはブナもナラも木の実が不作のようです。クマが人里にきてうろつき、人を襲う事件があとを絶ちません▼山形の飯豊町の農家の玄関先で、夫婦に重傷を負わせる。同じ山形の長井市では中学校に入り込み、職員を突き飛ばし校舎の中を歩き回る。福井県勝山市の介護施設に現れたクマは、出勤した女性看護師の顔や胸にかみつきました▼昔、薬として珍重されたクマの胆が同じ重さの金と交換された、といいます。それほど人が捕るクマは少なく、人とクマのすみわけがありました。今は大違い。木の実不足であっても、さまざまなえさを食べるようになったクマが生息数をふやしている、との話もききます。差し迫った危険を取り除きつつ、人とクマの新しい関係をどう築く。難問ですが、急がれます。





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