2010年10月7日(木)「しんぶん赤旗」

主張

日銀追加金融緩和

「悪魔のサイクル」脱却を


 日銀は5日、前日から開いていた金融政策決定会合で追加の金融緩和策を決定しました。

 それによると、政策金利を「実質ゼロ金利」とし、デフレ(物価の継続的な下落)が終わったと判断するまで継続します。さらに国債、社債に加えて指数連動型上場投資信託(ETF)や、不動産投資信託(J―REIT)を買い入れるための基金の創設を検討するとしています。

 日銀は前例のない危険な領域に踏み込もうとしています。

株と土地へのてこ入れ

 ETFは東証株価指数などの動きに連動するように株式を組み込んだ投資信託で、上場株式と同じように取引できます。J―REITは不動産投資で得られた利益を投資家に分配する仕組みです。

 これらの買い入れは日銀が株式市場と不動産市場に直接てこ入れするに等しいやり方です。しかも、多くのJ―REITは不動産業者が加わった投資法人が発行しているため、不動産を相場より高値で買い取るなど投資家との利益相反が問題になっています。

 創設する基金による長期国債の買い入れでは、通貨発行残高を買い入れ上限にするという従来の制限を取り払います。際限のない国債買い入れにつながる脱法的な政策であり、日本の財政に対する根本的な不信を広げる方針です。

 かつて日銀は異例の「量的緩和」に踏み出したとき、「思い切ったことをやれば必ず副作用もある」「いずれ何らかの契機でインフレに火がついて燃え広がる」とも警告していました。今回の決定について白川方明日銀総裁は「金融政策は異例の世界に入っていく」と認めています。

 白川総裁は9月26日の講演で「『時代の空気』のような議論に流されることなく、的確な情勢判断に努力したい」とのべていました。しかし、今回の決定は「時代の空気」、政治の圧力に流されたとしか思えません。

 政府は先月決定した「3段構えの経済対策」に、「円高、デフレ」緊急対応として日銀の「機動的な金融政策」を求めました。海江田万里経済財政相は9月18日の記者会見で「日銀法の改正」に言及しています。消費者物価の上昇率が数%に達するまで、“あらゆる手段”を使って金融緩和を進める「インフレ目標」を導入することが狙いだと伝えられています。株式市場や不動産市場への直接のてこ入れは、“あらゆる手段”の主要なメニューにほかなりません。

 欧米の景気がますます不安定になり、日本経済の輸出頼みには、くっきりと限界が見えています。それにもかかわらず民主党政権は国内需要を立て直す展望すら描けず、輸出頼みを続けています。日銀に対する追加緩和の圧力は政権による日銀への責任転嫁です。

「円高体質」のゆがみ

 かつて野村総研は、自動車業界が円高への対応でコストダウンによる競争力の回復を図り、それが新たな円高を生む悪循環を「悪魔のサイクル」と呼びました。

 一握りの大企業が賃金抑制とリストラ、下請け単価の買いたたきによって終わりのないコスト削減を進め、内需を冷やす一方で輸出を増やす―。この「悪魔のサイクル」から脱却し、日本経済を輸出頼みから内需主導に根本から変えていく改革が求められます。





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