2010年10月7日(木)「しんぶん赤旗」

多様な生命壊す新基地推進

議長国の責任日本どうする


 豊かな自然と多様な生き物が、その命をはぐくむ島、沖縄―。しかし県内各地で広大な県土を占有する米軍基地の「再編」により、多様な命が共生する「宝の海」、ヤンバルの森が破壊されようとしています。名古屋市で11日から開かれる「生物多様性条約締約国会議」(COP10)の議長国、日本政府の責任が問われています。(山本眞直)


 名護市の辺野古沖。「わあ、きれい。サンゴ礁のまわりを熱帯魚が泳いでいる」。愛知県の女性グループが、小型船から箱メガネで海中をのぞきながら歓声をあげました。

 この辺野古に日米両政府は米海兵隊普天間基地(宜野湾市)を「移設」しようとしています。

移設を合意

 県民の怒りの前に普天間基地「移設」先を「国外、最低でも県外」と公約しながら、民主党政権は今年5月、「辺野古移設」を米国と合意しました。

 菅直人首相は今月1日、臨時国会冒頭の所信表明で「(普天間基地「移設」は)5月の日米合意を踏まえて取り組む」と米国にその推進を改めて約束しました。一方で危機的な状況にある地球の「生物多様性」の維持、回復について話し合うCOP10にふれて、こう語りました。

 「議長国としての重要な役割を果たす」

 これにたいし、環境・自然保護団体などから辺野古の海の豊かな「生物多様性」を壊す新基地建設を推進して議長国の責任が果たせるのか、との声があがっています。

図 (写真)辺野古沿岸の海草藻場。葉の上には貝類が付着しています(撮影・山形将史)



沖縄最大の海草藻場 辺野古

基地つくれば海は

 米軍の新基地が計画されている辺野古崎周辺の海域は「厳正に保全すべきAランクの海域」(沖縄県環境保全指針)です。

絶滅危惧種

 国の天然記念物で絶滅危惧(きぐ)種に指定されているジュゴンが回遊し、海底には沖縄で最大規模といわれるジュゴンがエサにする海草藻場が広がり、ジュゴンのはみ跡も確認されています。

 2007年9月には大浦湾でアオサンゴの群集が発見されました。アオサンゴは日本政府も加盟する国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種にリストアップしています。

 北限といわれた石垣島白保の群落を上回る規模です。白保の群落が平坦(へいたん)な浅瀬に形成されているのに対し、大浦湾の群集は深く切り込んだ斜面に棒状に成長している特徴があります。同海域ではユビエダハマサンゴ、「動くサンゴ」といわれるキクメイシモドキなど多くの生きものの生息が確認されています。

 新基地が計画されている辺野古崎はアオサンゴ群集からわずか3キロの距離です。ここを埋め立て、滑走路をはじめ戦闘機洗浄場や弾薬装弾場などがそろう巨大基地の建設を許せば辺野古・大浦湾の「宝の海」への影響ははかりしれません。

 辺野古・大浦湾を調査した日本自然保護協会は9月28日、緊急合同調査リポートで次のように指摘しました。

 「沖縄島最大の海草藻場が広がる辺野古海域は、ジュゴンに残された貴重な海草藻場として積極的に保全すべきだ。普天間代替施設建設はもとより、海草藻場をかく乱する米軍演習についても中止が求められる」

有言実行を

 沖縄の環境問題にくわしい桜井国俊・沖縄大学図書館長は鳩山由紀夫前首相の「この海を埋めるのは自然への冒とくだ」との発言を引用、こう指摘します。

 「日米合意の推進はその実行であり、地球上のすべての生物の命を守るCOP10の『議長国としての役割を果たす』とはあまりにも二枚舌であり、ダブルスタンダードではないか。埋め立てられようとしている辺野古は沖縄最大の海草藻場であり、COP10の準備会合で日本政府は破廉恥にも『藻場の保全』を提起した。菅首相の言明は国際的に通用しないし、沖縄県民はその矛盾した態度を許さないだろう」

 前原誠司外相の国連総会生物多様性ハイレベル会合(9月22日)での演説も例外ではありません。「生物多様性の損失により地球、人類が危機的な状況にある中、その原因である人間の生活、活動を自然と共生した形に変えていくことが急務です。(略)日本はその先頭に立って実施していくことを約束します」

 アメリカ言いなりで辺野古の海を埋め立てるのか、それとも新基地計画を白紙撤回し、生物多様性の保全・継承に本気で取り組むのか、菅民主党政権の「有言実行」が鋭く問われています。





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