2010年10月2日(土)「しんぶん赤旗」

主張

所信表明演説

国民の批判が聞こえないのか


 臨時国会が始まり、菅直人首相の所信表明演説を聞きました。

 参院選挙で批判をあびた消費税の増税問題や沖縄・普天間基地の県内「移設」問題などで国民の批判にどう応えるか注目しましたが、聞こえるのは「政権を本格稼働させる段階に入った」「『有言実行内閣』の出発」などという強がりです。反省どころか、「有言実行」の中身は、財界とアメリカの要求に応えるものばかりです。いったい菅首相には、国民の批判が聞こえないのか、聞く気がないのか。

開き直って「有言実行」

 菅首相は、ことし6月の就任後初の所信表明演説では、鳩山由紀夫前政権の普天間基地問題での公約違反や鳩山・小沢一郎両氏の「政治とカネ」の問題について、鳩山氏らの辞任で「けじめ」がついたと開き直り、みずからの責任は回避するのかと批判をあびました。今回の演説ではもっと悪くなりました。「有言実行内閣」のことばに続いて菅首相が持ち出したのは、日本社会の閉塞(へいそく)感について、「どの政権に責任があったか問うている段階ではない」と言い切ったのです。

 国民が政治に閉塞感を強めているのは、昨年夏せっかく自公政権を交代させたのに、民主党政権にかわっても肝心要の問題では何も変わっていないからです。菅首相のことばは、普天間基地問題での公約違反や消費税増税を持ち出して批判をあびたことなど、民主党政権の責任をあいまいにする居直りです。しかも菅氏が「どの政権の責任も問わない」というのは、政権交代前の自公政権の責任まで免罪するつもりなのか。6月の演説では「政権交代の原点に立ち返って」とあったのに、今度はそのことばさえありません。

 「有言実行」の中身が問題です。菅首相が「解決すべき課題」の第一としたのは経済成長ですが、日本経済が長年にわたって停滞し、国民の暮らしが悪化の一途をたどっているのは、政府が大企業を応援するばかりで「派遣切り」などに有効な対策をとらず、異常な貧困と格差の拡大など、経済のゆがみをますますひどくしているからです。大企業応援から国民の暮らし応援に切り替える必要があるのに、菅首相の「三段構え」の対策にはそうした立場がありません。

 それどころか来年度予算編成では、財界が要求する法人税減税のため、「年内に見直し案を取りまとめる」というのです。ゆがみは激しくなる一方です。参院選挙で国民のきびしい批判をあびた消費税増税についても、「社会保障改革」にかこつけて、「消費税を含め、税制全体の議論を進めたい」と明言しました。国民の批判に応える立場がないのは明白です。

財界と米要求には忠実

 外交でも「有言実行」の危険な中身は明白です。首相は「主体的な外交」といいながら「実効的な防衛力を整備する」と、「軍事力至上主義」を鮮明にしました。「日米同盟」を「基軸」に「深化・発展させる」とし、普天間問題でも「日米合意」を実行する立場も繰り返しました。ここでも国民の批判に応える立場はまったくありません。

 首相が演説で、民意を切り捨てる国会議員の定数削減を持ち出したことも重大です。財界とアメリカに忠誠を誓う「有言実行内閣」への批判を強め、政治を大本から転換していくことが急務です。





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