2010年9月21日(火)「しんぶん赤旗」

「文化庁概算要求」を読む

国家予算のわずか0.11%

抜本拡充にほど遠く貧弱

辻 慎一


 民主党政権による初めての本格的な予算編成となる2011年度文化庁概算要求が公表されました。総額は、前年度比31億4800万円増の1051億7200万円となっています。

総額の1割超「特別枠」頼み

 「事業仕分け」をうけた今年度予算で民主党政権は、文化の公的助成を削減しました。これには多くの芸術団体が反対の声をあげ、6月に発表された文化審議会文化政策部会の「審議経過報告」は、「諸外国と比較して極めて貧弱な文化予算を大幅に拡充」することを求めました。

 それだけに概算要求が注目されましたが、要求額は微増なものの抜本拡充にほど遠く、国家予算に占める割合もわずか0・11%と諸外国に比べ著しく低いままです。

 しかも、総額の1割以上が、「特別枠」に頼ったものとなっています。菅政権は、概算要求にあたって各省1割削減を押しつけ、そのうえで、「特別枠」をつかった増額要望を認めました。これは、今後「政策コンテスト」にかけ、絞っていくもので、各省庁から1兆円の枠にたいして約3兆円の要望が出されています。

 文化庁が「特別枠」で要望したものには、「子どもの文化芸術体験事業」や「新進芸術家育成事業」などが入っています。これらは本来、文化行政の柱として重視すべきもので、「政策コンテスト」にかけるようなものではありません。

 4月の「事業仕分け」第2弾では国立美術館、国立文化財機構が対象となり、結果は「国からの負担を増やさない」というものでした。それをうけて、概算要求段階で、国立美術館が1億3300万円減、文化財機構が1億7000万円減となっています。同じく独立行政法人の日本芸術文化振興会は2億9300万円減となっています。短期的な効率を求める行政手法の影響といえます。

 さらに、省内「事業仕分け」ともいえる「行政事業レビュー」が行われ、52事業が対象となりました。大半が「廃止」「縮小」となり、単価切り下げや事業の一部が「廃止」となっています。

 現在、芸団協が文化予算の大幅増額を求める署名を行い、反響をよんでいます。こうした声にこたえ、短期的な効率による縮減をやめ、増額に転じるべきです。

「縮減計画」は事実上破たん

 芸術活動への支援では、従来の支援事業が「舞台芸術創造力向上・発信プラン」として組み替えられ、71億9600万円が要求されました。

 このうち、「トップレベルの芸術団体、劇場・音楽堂からの創造発信」として、今回、55億4000万円が要求されました。これは「事業仕分け」で縮減判定を受け、文科省が「3年で1/2」に縮減する計画を発表した「重点支援」にあたるものです。多くの芸術団体が縮減に反対してきましたが、舞台芸術に限れば昨年より増加しており、縮減計画は事実上破たんしたといえます。

 また、支援方法についても、「1事業単位又は一定期間を見越して事業が実施できるよう、年間の優れた活動を継続的に支援」するよう変更しています。これは、これまでの公演ごとの支援から、芸術団体が要望してきた年間を通じた支援につながりうるものです。文化庁は詳細を明らかにしていませんが、本当に役立つものにするため注視していく必要があります。

 (つじ・しんいち 党学術・文化委員会事務局次長)





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