2010年9月19日(日)「しんぶん赤旗」

低所得者が入所できず

特養ホーム個室化で論争

自己負担取り消す必要


 国が推進する特別養護老人ホームの個室化が壁に突き当たり、施設のあり方や介護報酬などをめぐって論争が巻き起こっています。根底には、個室の居住費負担が重くて入所できない問題があります。


厚労省が方針転換

 厚労省は2003年から、個室と共同スペースを備えた「ユニット型」施設の建設を推進しています。特養ホームのうちユニット型の割合を14年度に7割以上(現在約2割)にする目標を設定。ユニット型施設には4人部屋などの「従来型」施設より高い介護報酬が支払われてきました。

 ところが、自民・公明・民主の3党が賛成して05年から施設の居住費・食費を自己負担としたため、低所得者が入れない事態を招きました。居住費の安い相部屋への入所希望が多いことを受け、ユニット型と相部屋を併設した特養ホームの新設が続きました。

 しかし国は新築の併設施設について、「ユニット型推進に反する」との立場から、従来型の低い介護報酬しか払わない方針をとったため、併設施設を容認・推進してきた自治体が反発。社会保障審議会介護給付費分科会の議題とされていました。

 7月から3回にわたる議論の中で、厚労省はこれまでの方針を転換(6日)。新築の併設施設のユニット型部分にはユニット型の高い報酬を支払う意向を示しました。

 低所得者が入所できない問題を放置したまま、強引にユニット型だけを推進する方針が破たんした格好です。

国の責任で軽減を

 特養ホームには「終(つい)の住み家」の側面があり、個室化は尊厳ある生活に不可欠だと関係団体は強く要望してきました。

 しかし、居住費の負担が入所を妨げています。

 東京23区の場合、ユニット型施設の平均的な年間利用料(介護費の1割負担・居住費・食費・日常生活費)は、年間所得80万円以下の低所得世帯で負担軽減を受けていても約75万円にもなります。相部屋は約56万円です。このうち居住費負担は、相部屋が月約1万円なのに対し、ユニット型は約2万5千円に上ります。

 このため相部屋への入所希望は多く、横浜市の調査(07年)では入所申し込み者の48%が相部屋を望んでいます。理由の51%が「ユニットは費用が高い」でした。

 国は「高齢者の尊厳」のための個室化推進と言いながら、一方では「居住費の負担を軽くする」などとして、個室面積の最低基準を約8畳から約6畳半へと9月中にも引き下げることを決定。関係者は、「『尊厳』に反し、負担軽減につながるかも不明だ」と批判しています。

 介護給付費分科会では、低所得者の居住費負担を軽減する仕組みを国の責任でつくり、現在原則的に認められていないユニット型施設への生活保護受給者の入所を認めるよう求める意見が噴出しています。

 経済的理由で施設に入れない人をなくすためには、食費・居住費の自己負担化を取り消す必要があります。 (杉本恒如)


 介護報酬 介護事業者に支払われる介護サービスの公定価格で、サービスごとに金額が決まっています。うち1割は利用者が利用料として負担し、残り9割は介護給付費として保険料と公費から支払われます。3年ごとに改定されます。

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