2010年9月1日(水)「しんぶん赤旗」

辺野古新基地案 日米報告書 滑走路2案併記

民家上空飛行も


 政府は31日、沖縄県・米軍普天間基地(宜野湾市)の「移設」先として、同県名護市辺野古沿岸部に建設する新基地に関する日米専門家会合の報告書を発表しました。


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(写真)「V字案」「I字案」ともに新基地建設の予定地とされている沖縄県名護市の辺野古崎

 報告書は滑走路をV字型に2本配置する2006年の日米合意「現行案」と、I字型の1本案の両論を併記。I字型では、視界が悪いときに用いる「計器飛行」の場合、「北東からの進入経路は地上を通る」と明記。民家上空を飛行する可能性を認めました。

 さらに、天候が良好なときに用いる「有視界飛行」のルートについては、「今後協議を継続する」として、変更の可能性を示唆しました。協議のなかで米側は、最新鋭の垂直離着陸機MV22オスプレイの配備を念頭にV字型の飛行ルート変更を要求しています。

 報告書は、V字I字案とも「安全性の水準を満たす」と明記し、杭(くい)打ち方式も検討したものの、敵からの攻撃に弱いなどの理由から却下。埋め立て方式が「最も適当」と結論づけています。

 環境面では、V字案では160ヘクタールが埋め立てられ、「東側の海岸が消滅し、いくつかの動植物の生息環境が失われる」とされ、I字案でも120ヘクタール埋め立てられ、同海岸は残るものの「動植物生息地への影響は未詳」としています。

 報告書発表にあたって、滝野欣弥官房副長官は上原良幸副知事と官邸で会談し、移設への理解を求めましたが、同副知事は会談後、「(受け入れは)困難と言い続けてきたことに変わりはない」と記者団に語りました。

 日米両政府は5月28日、基地の県内たらい回しに反対する沖縄県の民意を無視する形で、普天間基地の辺野古「移設」を明記した共同声明を発表しましたが、県民の反発を恐れ、最終結論を11月28日の沖縄県知事選後に決める方針です。

言語道断 名護稲嶺市長

撤回せよ 宜野湾伊波市長

 名護市の稲嶺進市長は31日、記者団に対し、同日に公表された辺野古「移設」に関する報告書について、「到底受け入れられない」と厳しく批判しました。

 稲嶺市長は、「V字であろうがI字であろうが、(市民・県民は)そもそも辺野古に新しい基地はいらないと言っている。どんな形にしようと言語道断だ」と述べました。

 米側が求めている集落により近くなる形の飛行経路について継続協議とされたことについては、「地元にも国民にも説明せずに、都合の悪いのは隠して都合の良いところだけ提示してきた。とても真摯(しんし)な態度で県民に向き合っているとはいえない」と批判しました。

 また、「国防だから専権事項だからと日米両政府だけで進められるものではない。沖縄県、名護市、そこに生活をしている人たちを無視して進めることは、民主主義の世界で許されるものではない」と断じました。

 普天間基地を抱える宜野湾市の伊波洋一市長も「辺野古回帰が県民に受け入れられない中で、日米協議が進められても県民の理解は得られない」と指摘。さらに、「日米共同声明の撤回を政府に求める取り組みを行っていく」と述べました。





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