2010年8月21日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 本欄に“夏でも涼しくしすぎてはいけない”という教えを書いた日の晩、寝冷えしてしまいました。小窓から入る風の、肌をなでる感触が残る朝。てきめんに、おなかをこわしていました▼今夏、自然の風の涼しさを別の場所でも体感しました。久しぶりに登った東北地方の山です。前夜、山中の宿の主人がぼやきます。「例年なら夏に涼しいこのあたりも、ことしは暑い日が続いていて…」▼しかし翌朝、標高1500メートルを超える登山口に立つと、さすがに別天地でした。冷気を含んだ風が吹き渡り、めざす山の岩壁から噴き出す火山ガスを巻き上げる。半そでの腕に、鳥肌がたつ。出発です▼連なる山や、山ろくの湿原に光る池や沼を眺めながら、高度をかせいでゆく。火山礫(れき)で埋まる尾根を見上げると、目にしみる空の青。頂上に立つ。遠く飯豊山地にたっぷり残る、雪の白さがまぶしい▼夏の花盛りの湿原を横切り、下りました。草むらに散らばって、かれんな花が隠れんぼするように咲いています。ミヤマリンドウ。花が鐘のような形のリンドウでなく、スミレをひと回りふたまわり大きくしたような高山性のリンドウ。青紫の花をめでているだけで、涼しさを覚えました▼リンドウ類は光に敏感、といわれます。日が落ちたあとはもちろん、曇り空でも花を閉じています。さいわいでした。花を開いていてくれて、ありがとう。別れを惜しみながら、下りました。ふところ深く抱きとめてくれた、山の自然のすべてに感謝をささげつつ。





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