2010年8月8日(日)「しんぶん赤旗」

イラク 組閣が難航

政治空白 長期に

治安悪化 市民が懸念


 【カイロ=松本眞志】3月の総選挙以来、いまだに新内閣を組閣できないイラクで、治安悪化などイラクの未来に対する不安が内外で高まっています。戦闘部隊の撤退期限を今月末に控える米国は秘密裏に組閣工作を行っていると伝えられます。


 国連のメルカート駐イラク特別代表は4日、国連安全保障理事会で、イラクでの組閣の遅れが同国のインフラ(経済・生活基盤)と市民サービスに影響を与えるだろうと述べました。同氏は、「長期に及ぶ組閣の遅れは、イラクの不安定化の要因となり、民主主義に敵対する勢力が策動する条件をつくり出している」と警告しています。

 今年3月の連邦議会選挙ではアラウィ元首相の世俗会派イラキーヤが第1党(91議席)となり、マリキ首相の法治国家連合(89議席)もきん差に迫りました。当初、マリキ氏は選挙で不正があったとして、この結果を認めませんでした。「選挙結果は正当」との司法判断が下された後も、マリキ氏は他党派との統一会派を試みてアラウィ氏の組閣を妨げてきました。

 こうした中、米国は今月に入り、秘密裏に米国家安全保障会議の高官をイラクに派遣したといわれます。4日付の汎アラブ紙アッシャルク・アルアウサトによると、米高官は、マリキ、アラウィ両氏と個別に会談し、両者による権力の分割を提案しました。提案の内容はマリキ氏が2期目の首相を務める一方、アラウィ氏は国家安全保障問題の要職に就くというもの。

 マリキ氏側は提案に同意しましたが、アラウィ氏は「イラキーヤは選挙に勝利した最大の会派であり、憲法によって次期政権を組閣する権限を与えられている」と提案を拒否しました。

 現在、アラウィ氏はイスラム教シーア派主体のイラク国民同盟とクルド同盟との連立を模索し、「数日後に組閣の難航を打開する合意に達する見通しだ」とも述べています。

 政治の空白が続く中、治安の悪化が進んでいます。今年7月に爆弾テロなどで死亡したイラク人は535人となり、2008年5月以来最悪の状態です。

 治安の悪化は、間近に迫る米軍撤退開始に対しイラク市民に複雑な心境を抱かせています。バグダッドに住むモハメド・サアドンさん(43)は「イラクを安定した国にするのは米国の義務だ」と語っています。





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