2010年7月26日(月)「しんぶん赤旗」
法律家の「卵」負担重く
司法修習生の給費制廃止
金持ちしかダメか?
弁護士や検事、裁判官の卵である司法修習生に国が給与を支払う「給費制」を廃止して、必要な人は国から借金をする「貸与制」の導入実施が11月から予定されています。法律家を志す者に大打撃となる制度改悪に強い批判があがっています。(矢野昌弘)
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司法修習生は、現場に出るまでの1年間、平日フルタイムの研修が待ち受けます。修習生はアルバイトが禁止。国が給与を支給することで、修習生が研修に専念できる環境がつくられてきました。
国が金貸す計画
これを激変させるのが、「給費制」の廃止です。今年11月の修習生から無給となり、生活費が必要な人に国が金を貸す計画です。返済義務があります。
「貸与制のもとで修習を受けることになれば、借金は700万円くらいに増える。弁護士になる夢が優先だから、借金をしてでも修習を受けると思う。そこにつけこむ点も、この制度は許しがたい」と怒るのは、司法試験の結果を待つ都内在住の男性(25)です。
男性は今年、法科大学院を卒業するまでに奨学金400万円を借りています。「弁護士も就職難です。就職難の中で借金を返すのは怖い。お金のない人が法律家になれないのは大問題だ」
日本弁護士連合会(日弁連)は4月、「金持ちしか法律家になれなくていいのか」と、緊急対策本部を立ち上げました。
日弁連が行った司法修習生への調査で、修習生の53%が法科大学院卒業までに借金を抱え、平均で318万円にのぼります。
“目線”の変化も
給費制がなくなると、法律家の“目線”の変化も懸念されます。
水俣病不知火患者会事務局の滝本忠さん(49)は「原告や被害者は経済的に弱い方ばかり。交通費や実費も出せない中、熊本県だけで弁護士30人が、この4年8カ月、手弁当でがんばっていただきました」と、和解に道を開いた弁護士の活動に感謝します。一方で、こう懸念します。
「弁護士が多くの借金を抱えると、お金に目がいき、お金をとりやすいところに目がいくのでは、十分な報酬も期待できず時間もかかる弱者救済に目が行かないことが心配」
給費制廃止を目前に、撤回を求める声が広がっています。6月に、若手弁護士や司法修習生などでつくる「ビギナーズ・ネット」や、市民団体などでつくる「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」が結成されました。
28日には、自由法曹団や全労連などの主催で「司法修習生に対する給与の支給継続を求める各界懇談会」を都内で予定しています。
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