2010年7月16日(金)「しんぶん赤旗」

航空自衛隊小松基地

法務局が防衛省を調査へ

幹部自衛官への人権侵害


写真

(写真)航空自衛隊小松基地

 現職の幹部自衛官が隊内で起きた窃盗、情報漏えい事件で、警務隊から容疑者扱いされ、自白の強要などの人権侵害を受けたとして救済を求めて法務省金沢地方法務局に提訴しています。この問題で、同法務局が防衛省に事実確認などで調査する方針を固めていることが15日、本紙の取材で分かりました。

 法務局による防衛省への人権侵害調査はほとんど例がなく、異例です。調査は数カ月程度で結果が出ると見られています。

 同法務局が調査するのは、航空自衛隊小松基地(石川県)の小松管制隊で2008年3月に発覚した同管制隊所有のUSBメモリー(可搬記憶媒体)盗難事件での警務隊による捜査のあり方です。

 現職幹部自衛官から違法捜査、人権侵害の告発と救済の訴えがあり、同法務局は7月5日に受理しています。

 提訴したのは管制隊所属(当時)の池田久夫1等空尉(46)。

 池田1尉はすでに内部告発者を保護する「公益通報者保護法」に基づく公益通報で防衛省に対し警務隊による違法捜査、人権侵害を告発しています。


解説

窃盗事件で容疑者扱い

自白強要にメス入るか

 金沢地方法務局の調査が実施されれば、防衛省、自衛隊内でまん延する自殺やいじめ、暴力事件などのいわゆる不祥事の実態、真相解明の端緒を開く可能性をもちます。しかし法務局の調査には強制力はなく、自衛隊が拒むことも予想されます。

 池田1尉の公益通報によれば、08年3月に発覚したUSBメモリー窃盗事件で容疑者とされ、09年5月14日に小松地方警務隊による家宅捜索をうけ、取り調べが20日間続き、本人の否認を理由にうそ発見器にもかけられました。

 警務隊は「自白しなければ逮捕になり、マスコミにも載り、子どもがいじめにあうぞ」などと自白を強要。長時間に及ぶ取り調べで体調を崩し、受診の結果適応障害と診断されました。治療のため通院を申し出ても拒否され、衛生隊の点滴ですまされたといいます。

 池田1尉は、警務隊がうそ発見器にもかけ、家宅捜索で私物を押収しながら容疑を裏付ける材料がないにもかかわらず、その後も再調査を口実に容疑者扱いを続けているとして「こんな違法捜査、人権侵害は許されない」と主張しています。

 航空自衛隊小松基地が抱える問題は深刻です。08年秋に「日本の侵略国家はぬれ衣(ぎぬ)」との民間懸賞論文で更迭された田母神俊雄航空幕僚長(当時)は小松基地に司令部を置く第6航空団の元司令。懸賞論文を主催した民間業者にさまざまな便宜を図ったのも同基地でした。

 同幕僚長の「よびかけ」で小松基地の幹部自衛官らも懸賞論文に大量応募して問題となりました。

 憲法無視、民主主義否定の「田母神」事件と警務隊による違法捜査、人権侵害は時期が重なりあって進行しているだけに、第三者機関である法務局が、両事件に共通する自衛隊の体質にどうメスを入れるのかが注目されます。(山本眞直)





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