2010年7月15日(木)「しんぶん赤旗」

B型肝炎原告 国の案に反論

予防接種は当時義務 国はなぜ証拠求める


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(写真)厚生労働省前で宣伝する榊原さん

 福岡地裁(西井和徒裁判長)で12日開かれたB型肝炎九州訴訟第1回和解協議で国が「母子手帳」のない人に「母子手帳」に代わる記録の提示を求めたことに原告らの怒りがひろがっています。

 原告の6割は「母子手帳」を持っていません。保管義務がないからです。自治体は集団予防接種の記録として「接種台帳」を作っていましたが、保管義務は5年間だけ。九州訴訟原告の榊原俊之さん(58)は「母子手帳」がないため、住んでいる福岡県太宰府市に電話。「接種台帳」が残っているか確認しました。市は「10年間ぐらいは保管しますが50年以上たって、ありません」と告げました。

 肝臓がんが再発した榊原さん。「今週末入院して抗がん剤治療。私には時間がない」と、無理難題を持ち出す国に抗議します。

罰則付け強制

 原告側は「母子手帳」の提示自体、必要ないと主張します。なぜなら、戦後間もなく制定された予防接種法は、予防接種を3000円の罰則付きで国民に強制しました。当時、上級国家公務員の月給が2990円でしたから、高額の罰金でした。

 接種する疾病は12種類。占領軍によって権力的、徹底的に行われたと記録されています。例えば、1946年3月13日付「朝日」は「悪疫に挑む警察網 旅行者、浮浪者に強制接種」の見出しで、(1)町会は隣組全員に接種(2)職場ごとの種痘所を設置する(3)旅行者が通過する上野、新宿、品川などといった主要駅で臨時接種を行うことを紹介、「上野の浮浪者をはじめ刑務所、留置所などの接種に対して警察官の協力を得て接種を徹底する」と報じています。

 同年3月31日付同紙は「種痘をしていないお方は罷(まか)り通さぬと新橋のたもとにできた天然痘防衛のお関所」という記事を銀座通りの街頭で予防接種する写真つきで掲載。全国どこにいても一人も漏らさずに予防接種を受けさせていたことを伝えています。

 連合国軍最高司令官、マッカーサーのもとで公衆衛生福祉局長として君臨したC・F・サムスは、その著『DDT革命』で「1951年には、人口8450万人のうち、6000万人に接種を行った」とのべ、「世界医学史上類をみない」と、豪語しています。

 このように、幼児期に日本に在住していれば予防接種を受けなかった人はいません。原告側が主張するように「母子手帳」がなくても、記録がなくてもまぎれもなく予防接種を受けたのです。

命切り捨て案

 また、国は「母子感染」でないことの証明について、すでに母親が亡くなっている場合、長男か、長女が感染していないことの証明を求めています。これでは、弟や妹しかいない場合や一人っ子や親・きょうだいを亡くした人は、救済対象から除外されます。

 榊原さんは、母親は他界、妹だけです。「国は救済する気がない。これまで長いこと放置してきて、いまになって予防接種をした証拠を出せというのは不合理だ」と指摘。限りなく救済範囲を狭める命切り捨ての国の姿勢を批判しています。(菅野尚夫)





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