2010年6月27日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 落語協会の新しい会長に、柳家小三治さんが選ばれました。「ホントは新劇の役者になりたかった」という小三治師匠、俳句歴も長い▼今ごろの季節を詠んだ句なら、たとえば「やわらかく闇を切りゆく螢(ほたる)かな」。やはり虫を詠んだ、別の句もあります。「ごきぶりが音から先にやってくる」。この句で、「ごきぶり」もりっぱな夏の季語と知りました。俳句の世界は、台所の迷惑者だからといってのけ者にしません▼自由でふわっとした句は、師匠の「座右の教訓」にも通じているようです。故志ん生師匠の逸話に学んだ、といいます。志ん生師匠は、落語を面白くする秘けつを聞かれた折に答えたそうです。「面白くやろうと思わないことだよ」▼つまり、志ん生師匠によれば、「落語はもともと面白くできてるんだから、素直にそのままやればいいのだ。それを無理に笑わせようとしたり、わざと面白くやろうとするからつまらなくなっちゃう」(柳家小三治『落語家論』)▼もちろん、素直でも面白くなければ意味がありません。噺家(はなしか)の、苦労のしどころでしょう。小三治師匠は、雑誌などの落語評についても書いています。「新しい演出や新しい下げ(=落ち)の工夫などをほめておけばいいという手合いが大はやりのようだが、あれはほかにほめようを知らない者の仕業である」▼なるほど。似た話は選挙でも思い当たります。あの「小泉劇場」のように、物事の本筋を外し、一勢力のわざとらしい演出をはやし立て報じる手合いに、ご用心。





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