2010年5月19日(水)「しんぶん赤旗」

口蹄疫 農家悲痛

殺処分待つ豚の世話…つらい

処分対象11万頭超

宮崎県が非常事態宣言


 家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)被害が宮崎・都農(つの)町で発生してから1カ月。感染したり、その疑いのある牛や豚が見つかった農場・施設が120カ所を超え、1市4町に拡大、宮崎県が非常事態宣言を発する深刻な事態になっています。殺処分しなくてはいけない家畜も11万頭を超えました。最大の被害に見舞われ、移動制限区域を設けた川南町でみました。(阿部活士)


移動制限の川南町

写真

(写真)国道10号沿いの高鍋町の「自主消毒ポイント」で雨の中車体を数秒間消毒する人たち=18日、宮崎県高鍋町

 宮崎市から国道10号沿いに連なるように位置する新富、高鍋、川南、都農の各町。道路沿いには「自主消毒ポイント」の看板が立っています。

 川南町役場では、白衣と白いマスク姿の人が役場を出入りする車を止めて消毒作業にあたっています。洗車とは違う、ほんの数秒間の消毒作業。この作業を町は15日からやっとはじめたといいます。

 高校卒業後、親から引き継いだ養豚業一筋の男性(60)。親のメスブタ85頭、種オスが9頭、肉ブタを800頭飼育しています。

 えさ代は、月250万円かかります。六つの豚舎にわけ、離乳用、子豚用、肥育前期用、仕上げ用と手間ひまをかけます。13日に分(ぶん)娩(べん)直後の1頭の母ブタが口蹄疫を発症、絶望的な思いで6日間を過ごしてきました。

地図

 「早く処分してほしい。殺されていく子豚のためにえさをやり、ふんを豚舎から掃除する、このむなしさから解放されたい」と男性。

 男性は、口蹄疫のウイルスの拡散を恐れて、「養豚農家として当然の常識」として、発症以来一歩も農場の外に出ていません。だれかが訪問するのも断っています。連絡はもっぱら、携帯電話です。陸の孤島のような生活を強いられています。

 男性は、養豚仲間と電話で話し合って共通する怒りは「予想していなかった事態だ」という行政の姿勢だといいます。それは、1997年に台湾で大発生したとき、発生初期の移動禁止が遅れて感染は全土に広がったといいます。

 「養豚農家は台湾の教訓からこの事態は想定していた。だから外出もしないでがまんしているのに、県も国も何の防疫対策もとってこなかった。殺処分も、どこの責任でやるか明らかでない。文書さえ出されていない」


 口蹄疫 牛や豚など蹄(ひづめ)が割れている偶蹄(ぐうてい)類のウイルス性急性伝染病で、家畜伝染病に指定されています。伝染力が非常に強く、感染すると発熱、口の中や蹄の付け根に水ぶくれができ、子牛、子豚などは死亡することがあります。アジア、アフリカで発生しており、日本では10年前に宮崎県と北海道で発生しました。





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