2010年5月13日(木)「しんぶん赤旗」

主張

普天間「一括」案

公約違反の強行は許されない


 米軍普天間基地の撤去をめぐって迷走を重ねてきた鳩山由紀夫政権が、首相が公言してきた5月末までに「決着させる」という方針を事実上断念する一方、名護市辺野古への新基地建設を含む政府案を「パッケージ」(一括)で示し、アメリカなどとの交渉を本格化させようとしています。

 「決着」の時期だけでなく、普天間基地を「国外、最低でも県外」に移すという自らの公約を裏切り、県内に新基地までつくる姿勢こそ、首相の責任が問われる大問題です。公約違反の「一括」提案を強行するなど、断じて許されることではありません。

展望のない「一括」提案

 沖縄県民も、鹿児島県徳之島の住民も、相次ぐ県民ぐるみ、島ぐるみの大集会で、普天間基地の存続にも、その「移設」にも、「ノー」を突きつけたばかりです。普天間基地の無条件撤去をアメリカに要求するどころか、辺野古での新基地建設を蒸し返し、徳之島をはじめ全国各地に訓練などを「移転」させようなどという政府の「一括」提案が、歓迎される見通しなどまったくありません。

 沖縄県の仲井真弘多知事も徳之島の3人の町長も、政府の「県内移設」、徳之島「一部移設」の提案を拒否しました。11日に改めて平野博文官房長官、北沢俊美防衛相と会談した仲井真知事が、「県民には期待が裏切られたとの思いが強くある」「県内移設はきびしい」と発言したのは当然です。

 政府は提案を「ワンパッケージ」でアメリカなどに示すといいながら、国民にはその詳しい内容さえ明らかにしていません。しかし、伝えられる内容は、とうてい受け入れられないものばかりです。

 沖縄県内での普天間基地の「移設」では、名護市辺野古に、自公政権時代に米と合意した埋め立て案を一部「修正」して、くい打ち桟橋方式などで新基地を建設するとしています。しかし問題は建設方法ではありません。新基地建設そのものに県民は「ノー」を突きつけています。新基地ができれば騒音など基地被害も県内で「たらいまわし」されるのは明らかです。県民が受け入れるはずのない提案を平然と持ち出すこと自体、鳩山政権には県民の気持ちがわかっていないことを示すだけです。

 政府の提案が、沖縄の「負担軽減」を口実に、徳之島や各地の自衛隊基地などに一部の訓練を「移転」させようとしているといわれるのも、基地被害を全国に拡大するだけでどこでも歓迎されない提案です。だいたい全国に被害を拡散させれば沖縄県民が喜ぶとでも政府が考えているとすれば、県民をばかにするのにもほどがあります。沖縄でも全国でも米軍基地をなくすことこそ、県民の願いです。

撤去こそ国民との約束

 鳩山首相は、「『5月末』は国民との約束だから、できる限りのことはやる」と繰り返しますが、問題は「5月末」ではありません。普天間基地を撤去し、沖縄に集中する基地の負担を取り除くかどうかです。それさえ理解できないとすれば、鳩山政権に民意を代表する資格が問われます。

 鳩山首相は先に、沖縄の海兵隊の「抑止力」としての役割に認識が足りなかったといいました。しかし、本当に求められるのは、主権者である国民が何を求めているのかについての正しい認識です。





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