2010年5月2日(日)「しんぶん赤旗」

主張

NPT再検討会議

核兵器廃絶の交渉に踏み出せ


 核不拡散条約(NPT)再検討会議が3日から国連本部で開かれます。世界のほとんどの国が参加して核兵器について議論する会議で、5年ごとに開かれますが、今回は歴史的な重要性をもちます。

 核兵器廃絶は世界の圧倒的多数の国の要求です。その実現には、廃絶の国際協定締結に向けた交渉に踏み出すことが不可欠です。その課題にどう応えるか、会議のなりゆきが注目されています。

「明確な約束」にたって

 NPTは米、ロ、英、仏、中の核兵器国に核兵器の保有を認める一方、他の国には認めないという不平等な条約です。それゆえ、保有国には核軍縮を義務づけています。

 NPTは1995年に無期限延長されました。その際、核兵器国は非核兵器国を核攻撃しないと誓約し、国連安保理がその趣旨を決議しています。しかし、核兵器は廃絶すべきであり、廃絶に向けて行動すべきだとの要求が、新アジェンダ連合諸国や非同盟諸国を中心に強まりました。

 NPT加盟国すべてが廃絶に向けて行動する意思を表明したのが、2000年の再検討会議でした。会議は13項目にわたる核軍縮の「実際的措置」を採択しました。その6項は、核兵器国は核兵器の完全廃絶の達成を「明確に約束」するとしています。廃絶の方向性を核兵器国にも認めさせたもので、重要な成果です。その土台に立って前進することを、世論は強く求めました。

 ところが、その後に成立したブッシュ米政権は核兵器を実際に使える兵器とし、核先制攻撃も辞さない、と世論に挑戦しました。05年の再検討会議は00年の成果の確認さえできず、失敗しました。

 米国による核脅迫のもと、核開発疑惑が北朝鮮やイランなどと広がりました。米国はNPTをたてに核兵器を開発する国に圧力をかけましたが、ブッシュ政権の姿勢はNPT体制自体を掘り崩すものでした。新たな核拡散の脅威を前に、キッシンジャー氏ら元米政府高官も、核兵器廃絶を掲げることが脅威に対処する「唯一の道」だと主張するようになりました。

 オバマ米大統領の「核兵器のない世界」の提唱は、歴史的に核軍拡を推進してきた米国が、初めて廃絶を国家政策にするという重要な動きです。今年の再検討会議では、00年の「明確な約束」を再確認し、その土台にたって廃絶に向けて具体的に前進する条件が生まれています。

 ただ、オバマ政権も核拡散が米国にとっての最大の脅威だとみなし、保有国による核独占を前提にしたNPT体制の強化を目標としており、廃絶に踏み出すにはなお距離があります。

 核兵器廃絶を求める反核団体や市民は2日、ニューヨークで「核兵器のない世界」のための国際行動に取り組み、日本からも多数が参加します。反核世論が各国を動かし、廃絶のための交渉の開始に道を開くことが求められます。

「核抑止力」論を捨てて

 日本は唯一の被爆国として、廃絶に向けた前進のイニシアチブをとるべきです。そのためにも、「核抑止力」論をきっぱりと捨て、核兵器廃絶を正面から要求する必要があります。政府は米国の「核の傘」にすがる姿勢を根本的に転換することが不可欠です。





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