2010年4月29日(木)「しんぶん赤旗」

主張

中国人強制連行

企業も国も加害責任果たせ


 第2次世界大戦中に強制連行した中国人を新潟県内の事業場で強制労働させていた西松建設と被害者との間で和解が成立しました。

 強制連行の歴史的責任を加害企業が認めたことは重要です。「西松」にならい、加害企業すべてがすすんで謝罪と補償に応じるべきです。同時に、「国策」として中国人を強制連行し強制労働にかりたてた国も、加害責任を認め、責任を果たすべきです。

「国策」による強制連行

 今回の和解は、「西松」が昨年10月に広島県内での強制労働事件で合意した和解を、「歴史的責任」を認め、中国側の基金に補償金をゆだねるなど前進させたものです。

 強制連行され、「西松」で働かされた中国人は当初、裁判での解決を求めました。「西松」だけでなく、中国人強制連行・強制労働事件の裁判は全国各地で行われましたが、最高裁は2007年4月27日の「西松」判決で、個人の賠償請求を否定し、裁判による解決の道を不当に閉ざしました。

 しかし一方で最高裁は、「上告人(『西松』)を含む関係者」が「被害者の救済に向けた努力をすることが期待される」と、判決で求めました。和解はこれを受けたもので、「西松」は、強制労働の「事実を認め」「深く反省し謝罪」することになりました。多くの中国人を奴隷のように扱い、人間としての尊厳を奪ってきた加害企業として当然です。

 第2次世界大戦中、日本が強制連行し、35企業135カ所の事業所に配属した3万8935人の中国人のうち、6830人が1年数カ月の間に死亡したといわれます。いかにひどい扱いだったか、明白です。

 「西松」は新潟県内の事業場に国から配属された183人を毎日12時間1日の休みも与えず、ろくに食べ物も与えず、暴力を加え働かせました。被害者の訴えに耳を貸さず、謝罪も補償も拒んできたことへの反省を深めるべきです。

 問題は国の対応です。最高裁判決が救済努力を求めた強制連行の「関係者」には国も含まれます。強制連行・強制労働は「国策」であり、国が責任をとるのは当然です。政府が救済の義務がないかのような態度をとることは許されるはずがありません。

 中国侵略から太平洋戦争に突き進む中で、労働力確保のため、当時の政府は中国人を強制連行しました。1942年に中国人を「内地に移入」し戦争に「協力」させることを閣議決定し、44年には次官会議がその「促進」を決めました。「国策」で中国人農民などを、だましやおどしなど卑劣な手段で拉致したのは明白であり、その責任を免れることはできません。

「ドイツ方式」含め解決を

 鳩山由紀夫首相は、侵略と植民地支配への「お詫(わ)びと反省」をのべた村山富市首相の戦後50年に当たっての談話を、「尊重」するとしています。必要なのはことばではなく行動です。中国人ら被害者に対して具体的に謝罪し償いにふみだすことが重要です。

 日本と同じように、戦争中大量に強制連行・強制労働をさせたドイツでは「記憶・責任・未来」基金をつくり、国と企業が半分ずつ負担しあって7千億円もの補償金を支払っています。日本政府も「ドイツ方式」の検討を含め、強制連行への責任を果たすべきです。





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