2010年4月5日(月)「しんぶん赤旗」

新しい政治局面 日本共産党が大きく前進するチャンス

日テレCS番組 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、2日放映されたCS放送・日テレG+(ジータス)の番組「読売ニュース・ナビ直言直答」に出演しました。このなかで、現在の新しい政治局面、郵政問題での政権内の混乱、経済危機打開の方策について語った部分を紹介します。聞き手は読売新聞政治部の吉田清久氏。


国民は“二重の体験”――新しい政治を本格的に探求

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(写真)「読売ニュース・ナビ直言直答」に出演する志位和夫委員長

 番組は、「時のキーパーソンが登場し、ニュースの核心を論じる」というもの。質問は、“民主党政権への失望をどうみるか”から始まりました。

 吉田 昨年は政権交代が行われて、自民党政権に終止符が打たれたんですけど、それから半年すぎて民主党政権も国民の支持率が落ちていますし、国民の政権交代にたいする期待にもこたえられていない。いまの状況をどうみていますか。

 志位 国民の多くの方々が、政権は代わったけれど、政治の中身は変わらなかった、期待はずれだった、という思いを強めておられると思います。とくに、新政権の7カ月の動きをふりかえってみますと、国民が「ここを変えてほしい」と変化を望んだ肝心要の問題で、公約を裏切ったり、期待を裏切ったりすることの連続だったと思うんですね。

 たとえば、後期高齢者医療制度という、お年寄りを「姥(うば)捨て山」に追いやるようなひどい制度について、(民主党は)「撤廃する」というのが公約だったのですけれども、4年後に先送りする。しかも代わりにつくる「新制度」なるものについて65歳以上を別枠の制度にする――「姥捨て山」を拡大するという案が出てきました。

 それから、労働者派遣法の改正では、(政府提出の法案は)「与党3党案」と比べても財界の要求で大きく後退し、抜け穴だらけの「使い捨て」労働温存法案になっています。

 普天間基地の問題では、ともかくも「県外、国外」(移設)といっていたのが、結局(沖縄)「県内」に新基地を押し付けるという方向になっている。

 そして、「政治とカネ」の一連の問題をめぐって、何らの自浄作用も果たさないという姿勢がつづいています。

 こうなってきますと、政治の中身も、政治の体質も、自民党と変わらないじゃないかとなってきた。これが、この7カ月だったと思うのですね。

 国民は、“二重の体験”を積んだと思うんですよ。つまり、去年の8月の総選挙で、長年続いた自民党政権にいよいよ見切りをつけノーの審判を下した。そして、総選挙後の7カ月の体験で民主党政権でも政治は変えられないとなってきた。去年の今ごろは“自民か民主かどちらかを選べ”という「二大政党」論が盛んでしたが、いまではずいぶん様変わりして、“自民にも民主にも期待は託せない。新しい政治のほんとうの担い手はだれなのか”という、さらにすすんだ探求を本格的に開始しつつある。そういう政治局面の大きな変化が起こっていると思います。

 吉田 共産党はどういう立場なのでしょう。

 志位 国民が「ここを変えてほしい」と切実に願っている問題、そして民主党に期待したが民主党がそれを投げ捨ててしまっている問題で、日本共産党こそが国民の願いのたしかな担い手になって、それを実現する先頭に立ちたいと考えています。

 たとえば、後期高齢者医療制度の問題ではすみやかな撤廃のために頑張る。普天間基地の問題では「移設」ではなく「撤去」のために頑張る。労働者派遣法は「抜け穴」なしの抜本改正のために力をつくす。「政治とカネ」の問題でも、真相究明、企業・団体献金禁止という、(金権政治の)根を断つために奮闘する。「ここを変えてほしい」という国民の願いを、共産党こそが代弁して頑張る。政治を前に動かす責任を果たしていきたいと思っています。

参院選――頑張りいかんでは650万票達成の条件はある

 吉田 志位さんが委員長に就任したのは2000年11月ですが、選挙では伸び悩んでいるというか、このへんはどうでしょうか。

 志位 この10年間ということでいいますと、日本の政治をいわば「二大政党」の枠組みの中に無理やり押し込める「二大政党づくり」というシフトが敷かれてきた10年だったと思うんです。これは“自民か民主かどちらかを選べ”として、“共産党はカヤの外”においてしまおうという共産党排除シフトなのです。こういうなかで私たちはかなりの逆風も感じながら、そのなかで持ちこたえ、陣地を維持してきたという10年だったと思うのです。

 しかしここへきて、全体として、さきほどお話ししたように局面が変わってきて、「二大政党づくり」が思うようにすすまない。一方の自民党の方は解体状況が始まる。民主党も政権を担ったが国民の期待を裏切る。「二大政党」の全体が国民から見放されつつある。そういう方向に変化をしています。これから私たちが大きく前進できるチャンスがめぐってきていると考えています。

 吉田 昨年秋から、農協とか、全国森林組合連合会とか、地方医師会など、従来自民党の支持団体とみられていた勢力と積極的に連携しているような感じがありますが。

 志位 これは大きな変化だと思いますね。農協にしても、森林組合にしても、地方のいくつかの医師会にしても、自民党政治の壁ががらがらと崩れるなかで、「全方位外交」――つまりすべての政党と交流するという方向に切り替えた。そうしましたら、一番近いところに立っていたのが共産党だったということがわかった。全国的にうんと交流がはじまっているんですよ。自民党支持という壁が崩れたら、見晴らしがぐんとよくなって、一致点がたくさんあるということが確認されたという感じです。

 吉田 参院選での比例選で650万という見通しはどうですか。

 志位 もちろん簡単な仕事ではありません。しかし、政治状況の大きな変化がおこり、多くの国民からみて共産党が新たな有力な選択肢のなかに入る状況がある。保守もふくめて新たな共同の広がりも生まれつつある。頑張りいかんでは達成できると考えています。

郵政問題の混乱――根本に株式会社化の矛盾がある

 吉田 (鳩山政権は)郵政改革法案の見直しをやっていますが、預入限度額を1000万円から2000万円(に引き上げる)など、与党の中でごたごたしていますけれども、これをどうみていますか。

 志位 これは、なぜごたごたが起きるかという根本が大事なところだと思います。

 この間、郵政民営化をめぐって何がおこったか。民営化をやったために、地方の郵便局がどんどん閉鎖される、窓口がなくなってしまうという大問題がおこり、非常に大きな弊害が明らかになったわけです。こういうなかで、郵貯、簡保のユニバーサルサービス(全国均一サービス)をきちんと守ることが当然、必要となってきたのです。

 ところが、政府が出してきている法案は、郵便に加えて、郵貯、簡保についてユニバーサルサービスを義務付けておきながら、経営形態は株式会社化して三つに分社化の形態をとるという。ここに根本的な矛盾があるわけです。なぜなら、もうからない地域でもサービスを保障するのがユニバーサルサービスなのです。ところが、株式会社というのは、もうからない地域から撤退する自由があるのです。ここに根本的な矛盾があるわけです。本当にユニバーサルサービスをきちんと確保しようとするのだったら、公的な事業体――公社にすることこそ必要なのです。

 ユニバーサルサービスといいながら株式会社化というのは、根本が矛盾しているのです。そういう矛盾した枠組みを無理やりつくったものだから、預入限度額を2000万円に引き上げるという問題が出てきた。しかし、2000万円に引き上げるというのは、根拠がないんです。だいたい郵貯でお金を預けている人は、日常の生活資金を預けているのです。国民から1000万円を2000万円にしてくれという声があるわけじゃない。2000万円にしたら運用の問題も含めて、郵政事業のあり方をゆがめるわけです。私たちは2000万円にする合理的な根拠はないといっています。根本的に矛盾したことを無理やりやろうとするものだから、あんな混乱をおこしているわけですね。

内部留保と利益の還元で経済危機の打開を――日本共産党版「成長戦略」

 吉田 景気がなかなか本格軌道に戻らない。自民党と民主党で成長戦略でいろいろ議論していますが、何が原因だと思いますか。

 志位 どうしてここまで日本の経済状況が悪いかというと、私は、リーマン・ショック前の10年間に答えがあるとみています。その10年間で、大企業の経常利益は15・1兆円から32・3兆円に倍以上になっている。ところが、雇用者報酬――賃金は279兆円から最近では253兆円に1割も減った。直近でもボーナスの大幅減というデータが報道されました。

 つまり大企業が利益を上げても、働く人の収入は減っている。どこにお金がいっちゃったかというと、大企業の内部留保が142兆円から229兆円へと膨らんでいる。

 この内部留保がどういう形で現存しているか。この10年間で国内の設備投資――工場とか機械とかは少しも増えておらず、むしろ減っているのです。国内にお金が回っているわけではない。海外の子会社とか企業の株式の保有に回っている。

 つまり国内で正規社員を非正規社員に置き換えて吸い上げて、中小企業の単価を切り下げて吸い上げて、国内で国民から吸い上げたお金が、国内に回らないで海外のもうけに回されていく。一握りの大企業は大もうけを上げたが、日本のGDPはこの10年間で約500兆円ぐらいでまったく増えなくなってしまった。いまはもっと下がっています。「成長しない国」になってしまった。そして「国民が貧しくなる国」になってしまった。国内で国民から搾りあげたお金は、もっぱら海外での投資に充てられて、国内経済がいよいよ空洞化していく状況がおこっている。

 吉田 経済界からは「国際競争力」のためのものだという反論がありますが。

 志位 逆なのです。この10年間、「国際競争力」というかけ声で、正規社員を非正規社員に置き換える。中小企業の単価の買いたたきを野放しにする。「大企業が強くなれば、いずれは国民の暮らしが良くなり、経済も成長する」といってきたのに、その結果は、「成長しない国」になってしまった。「国際競争力」という掛け声ですすめてきた自民党流「成長戦略」の結果が、成長力の衰退と産業空洞化なのです。

 いまなぜ企業が国内に投資しないかといったら、需要がないからです。需要がないから国内に設備投資もしない。需要を求めて海外に逃げてしまう。この問題の解決の方法は、この巨額の内部留保と利益を社会に還元する。国民の暮らしに還元する。そして国内の需要・家計を活発にしていく。そのことによって国内の投資も活発になっていくでしょう。この道こそ、経済危機から国民の暮らしを守り、日本経済の健全な成長をはかる道になる。これは私たちの、まあ日本共産党版の本当の意味での「成長戦略」なのです。





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