2010年3月23日(火)「しんぶん赤旗」

社会リポート

陸上案もとんでもない

普天間「移設」 名護市民の思い

米軍機が人“標的” 山火事 爆音

よみがえる恐怖体験


 鳩山政権は23日、首相官邸で官房長官、外相、防衛相らと米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設問題で政府案決定に向けた協議を行います。政府案で有力なのが米軍キャンプ・シュワブ陸上案(名護市)、米軍ホワイトビーチ沖(うるま市など)の埋め立て案。いずれも県議会が全会一致で反対決議をあげた「県内移設」です。政府案の「軸」とされる陸上案の問題点を現地で追いました。 (山本眞直)


 1枚の図面があります。表題が「キャンプシュワブ内への移設地 十分に1500m滑走路を確保できる」。

 作成したのは政権与党の国民新党。陸上案は同党が提案、北沢防衛相も有力視している移設案です。

 図面は名護市辺野古、豊原、久志地域を中心に米軍キャンプ・シュワブを示す地図。そこに辺野古崎でのV字形滑走路の現行案のほか、辺野古陸上部に新設する500メートル四方のヘリパッド(離着陸帯)、内陸部に建設する1500メートル滑走路の飛行場の機能図が明示されています。

自公政権より悪質

 滑走路の東側延長線にはかつて核兵器貯蔵が指摘された弾薬庫群。辺野古などの集落は海を背に東にヘリパッド、北側に飛行場が迫る格好です。辺野古、豊原、久志の久辺(くべ)3区は現行案より集落への爆音、墜落などの被害が増大するとして「体を張ってでも阻止する」と反対を連名で決議しています。

 辺野古で建築金物店を営む男性は「民主党政権は国外・県外を公約しながら平然と県内移設を押し付けてくる。自公政権よりも悪質だ」と言います。

 「陸上案の飛行場予定地の山は、私たちの先人たちがまきをつくり、倒木を処理するなどして大事に守ってきたくらしの山。基地の中だから、山だからと破壊して基地をつくるなんて地域の人々は絶対に同意しない」

 「『陸上基地』が造られたら米軍のやりたい放題になる」と“恐怖”体験を語るのは国立沖縄工業高等専門学校の男性職員(60)。

 同高専は新基地建設と引き換えに自公政権が辺野古に誘致した「振興策」のシンボル。高専の隣地は米軍キャンプ・シュワブの実弾射撃場。付近にはヘリパッドがつくられ、米軍ヘリの離着陸訓練が日常的に行われています。

 男性職員は、グラウンドなどの芝生管理を担当しています。「芝生の草刈り中に、突然米軍の双発ヘリが私を“標的”にするように低空で接近してきた。2〜30メートル先で旋回したが、パイロットはVサインを見せていた。恐怖で動けなかった」

 ヘリは50メートル間隔で立つグラウンドの照明灯の間を抜けて接近してきたといいます。学生がサッカーを競技中に上空を旋回したこともあったともいいます。

 昨年3月には校舎から見渡せる米軍廃弾処理場で不発弾処理に失敗、海兵隊員が死亡しています。男性職員は「実弾射撃による山火事も日常茶飯事で、沖縄防衛局職員は学校の屋上でただ見ているだけ。米軍の消火体制はどうなっているのか、と聞いても『わからない』と言うだけだ」。

稲嶺市長「拒否する」

 名護市役所の市長室。「海にも陸にも新基地はつくらせない」を公約に1月の市長選で新基地容認の現職候補を破って誕生した稲嶺進市長は、問題の図面を見た瞬間、「あまりに非現実的だ」とのべ、こう訴えました。

 「飛行場の背後は山で、ヘリの旋回ルートは集落上空しかない。基地は15年期限の暫定というが、基地がつくられたら50年、100年も使用される。到底、受け入れられない」

 辺野古のヘリ基地反対協のテント村で座り込みを続ける当山栄さんは力を込めて、「(国民新党の)陸上案は県内移設を考える鳩山政権にとって渡りに船だ。4月25日の県民大会を成功させ、基地の県内たらいまわしをやめさせる」。



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