2010年3月13日(土)「しんぶん赤旗」

25%削減打ち出したが

具体化・制度設計は先送り

実効ある対策急げ

温暖化基本法案


 温暖化対策基本法は、先進国のなかで大幅に遅れていた日本の取り組みを抜本的に転換するものにしなければなりません。12日に閣議決定された政府の基本法案では、具体的な計画や制度設計は今後に委ねられており、実効ある基本法になるのかは今後の世論と運動にかかっています。(深山直人)


写真

(写真)2009年12月12日にコペンハーゲンで行われた温暖化防止の国際デモ(坂口明撮影)

 鳩山首相は昨年9月の国連環境特別総会で2020年までに、温室効果ガスを京都議定書の基準年である1990年比で25%削減すること、排出量の上限を決めて過不足分を取引する「国内排出量取引制度」や、太陽光など「再生可能エネルギー」の固定価格買い取り制度の導入、化石燃料の削減をすすめるための温暖化対策税(環境税)の検討などを表明しました。

 今回の基本法案には、鳩山首相の表明どおり25%削減の中期目標が明記されました。

産業界の排出削減は

 しかし、25%削減に反対する財界の要求を受けて、「主要国が公平な枠組みをつくり、意欲的な目標に合意したと認められる場合に設定される」との条件を付けたことは、一刻も早い温暖化対策が求められるなかで、日本政府の姿勢が疑われかねない問題です。

 温暖化対策にとって総排出量の8〜9割を占める産業界の削減を実現することが焦点でした。ところが、旧政権の対策は財界の自主努力に依存したものでした。

 経団連の自主行動計画の目標は策定以来90年比ゼロのまま。結局、08年度の排出量(速報値)は不況で減産にもかかわらず、90年度を1・9%上回る状態に陥っていました。

 日本共産党は、政府と財界・企業との間で目標と期限を明確にした公的協定を結ぶことなどを求めてきました。

 法案では、産業部門の削減をすすめる「排出量取引制度」について、排出総量に上限を課す方法を基本とする一方で、財界の要望を受けて、生産量の1単位当たりの排出量を規制する「原単位方式」も検討するとしました。原単位方式は、生産量の増加に伴い排出量が増えるため総量削減の担保とならないものであり、認めるべきではありません。

再生可能エネ拡大を

 また、「再生可能エネルギー」について全量の固定価格買い取り制度を導入したことは大切ですが、1次エネルギーに占める割合を2020年までに10%にすることにとどまったことは極めて不十分です。

 この問題でも旧政権は、原発を「温暖化対策の切り札」だとして、原発優先を続け、再生可能エネルギーの取り組みは不十分なものでした。原発は安全上の保証もなく技術的にも未確立であり、放射性物質による環境破壊も懸念されています。この原発に依存した温暖化対策が加速されることがないよう、再生可能エネルギーの利用を抜本的に拡大する目標を掲げるべきです。

 鳩山首相が「地球の命を守りたい」(施政方針演説)というのなら、これまでの財界まかせの姿勢と決別した実効ある温暖化対策を確立し、ただちに実行に移すことこそ、この人類的課題に対する国際的責任を果たす道です。


温暖化対策基本法案の骨子

○2020年までに排出量を1990年比25%削減

○50年までに排出量を90年比80%削減

○20年目標は主要国による目標合意が条件

○1次エネルギーに占める再生可能エネルギーは20年までに10%へ

○国内排出量取引は、排出総量の上限規制を基本としつつ、生産量当たりの規制も検討。制度案を1年以内をめどに作成

○温暖化対策税の11年度実施に向け検討

○再生可能エネルギーの全量固定買い取り制度を創設

○安全確保と国民の理解、信頼を前提に原発を推進



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