2010年3月4日(木)「しんぶん赤旗」

主張

中南米の新共同体

歴史的意義もつ自主的統合


 中南米・カリブ海地域のすべての国ぐにが参加した首脳会議が先月メキシコで開かれ、共同体の結成を確認しました。主権の尊重と紛争の平和解決などを原則に南米などで進んできた地域統合を全域に広げたもので、統合は新たな段階を迎えました。共同体設立は、「平和の地域共同体」の前進が、世界の主要な動きであることをあらためて鮮明にしています。

 新たな共同体には中南米に対して干渉を繰り返してきた米国は含まれていません。この地域で米国抜きの自主的・全域的な機構づくりは初めてのできごとであり、歴史的意義をもっています。

確固とした流れに

 共同体は中南米・カリブ海地域という歴史的にも文化的にも共通性を持つ地域の国々を包括しています。昨年軍事クーデターが起きたホンジュラスだけは、民主制に復帰していないとの理由で、今回は招かれませんでした。

 具体的な機構整備は2011年にベネズエラで、12年にチリでそれぞれ開かれる首脳会議で進められます。しかし、共同体の土台となる地域協力では、すでに長い積み重ねがあります。

 その一つは、米国の覇権主義的な干渉を排し、紛争を域内の協力で平和的に解決しようとする流れです。1980年代、ニカラグアやエルサルバドルでの内戦に米国が軍事干渉を行ったのに対し、域内4カ国がグループを結成して自主的解決を働きかけたことに始まります。同グループはその後、参加国を次々に広げ、地域的調整機構として現在にいたっています。

 共同体はその経験にたって、各国の独立と平等、内政不干渉、紛争の平和解決、国連憲章の尊重、民主主義の擁護、公正な国際秩序の建設などを原則としています。

 弱肉強食の新自由主義に反対し、貧困一掃や格差是正などの理念に基づいて独自の発展を進める努力も、今回の共同体結成に合流しています。ブラジルなどが経済力を高め、米国に依存せず地域協力によって経済発展をはかる展望を広げています。

 中南米ではこの10年あまり、米国による覇権主義と新自由主義のおしつけに反対し、社会進歩をめざす政治変革が大きく前進してきました。自主・自立の国づくりをめざす国ぐにが多数派となったことが、共同体設立に結実しています。さらに、自主的な地域統合がもはや政権の性格などにかかわるものでなく、将来の政権交代にも左右されない確固とした流れであることも示しています。

 米国は米州機構(OAS)に大きな影響力をもち、キューバを排除するなど、意にそわない国に圧力を加える道具として利用してきました。そのOASでも中南米諸国の要求でキューバ排除に終止符が打たれました。OASは今後も存続するものの、新たな共同体が政策調整で存在感を強めることは明らかです。

対等の協力関係を

 米国は中南米を「裏庭」とみなしてきましたが、この地域の変化は鮮明です。オバマ米大統領は昨年4月に開かれた米州首脳会議で、今後は中南米諸国と「対等のパートナー」として協力すると述べました。米国は対キューバ経済封鎖の解除にかじを切ることを含め、オバマ大統領の言明を現実の政策として進めるべきです。


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