2010年2月26日(金)「しんぶん赤旗」

主張

トヨタ米議会証言

「ものづくり」根本から見直せ


 トヨタ自動車の豊田章男社長が、アメリカ議会下院の大規模リコール(回収・無償修理)問題に関する公聴会で証言しました。

 リコールの引き金は、2009年8月にカリフォルニア州サンディエゴで起きた悲惨な事故です。トヨタの高級車レクサスが突然暴走し始め、道路わきのさくを突き破って大破・炎上し、乗っていた家族4人全員が死亡しました。

深刻極まる安全軽視

 トヨタ車の暴走は10年前から報告され、2003年末には米運輸省も調査に乗り出していました。しかし、トヨタが本格的なリコールに踏み切ったのはサンディエゴの痛ましい事故の後でした。

 そのリコールも、車体の欠陥ではなくフロアマットがアクセルペダルに引っかかる不具合として実施されました。トヨタは結局、アクセルペダルの欠陥を否定しきれず、今年1月、アクセルペダルを補修する新たなリコールに追い込まれました。07年には別の車種で、同様のペダル不具合を把握していたにもかかわらず―。

 一連の不誠実な対応でトヨタへの不信がいっそう膨らんだのは当然です。加えてアクセルやブレーキを制御するコンピューターシステムにも欠陥があるのではないかという疑惑が浮上しています。

 豊田社長はアクセル問題を知ったのは「昨年末あたり」だと答えました。それ以前には一切知らなかったという説明は信じられません。もし本当だとしても、安全を最優先すべき自動車会社として、どれほどトヨタが緩んでいたかを証明する事実にすぎません。

 07年のリコールの際、当局と交渉してリコールを小規模にとどめた結果、「1億ドル以上を節約できた」とする内部文書も発覚しています。トヨタが陥った利益優先・安全軽視は極めて深刻です。

 コンピューター制御の欠陥疑惑に対して、豊田社長は「安全第一で設計している。設計上の問題はない」とのべました。しかし、実際にアクセルペダルの動きだけでは説明できない事例が多数報告されています。疑惑をぬぐうには不十分です。コンピューター制御はアメリカにとどまらず、日本を含むトヨタ車全体の問題です。徹底した検証と、その情報公開が急がれます。

 豊田社長は「ものづくりを実践するため最大の鍵が人づくりである」と語りました。トヨタは「基本理念」として、下請けとの「共存共栄」を掲げています。反省すべきは、これらの根本が大きく揺らいでいることです。

 非正規雇用を拡大した上、長年にわたって貢献した労働者をばっさり切り捨て、強引に下請け単価をたたくやり方が「ものづくり」の基盤を破壊しています。

目先の利益優先でなく

 豊田章一郎名誉会長が戦後不況期に、自動車以外に雇用の場をつくろうとかまぼこ作りを修業したことは有名なエピソードです。品質を高めるために現場の作業員に一番の発言権を与え、会社の都合で解雇しないことはトヨタ創業期の経営理念とされています。

 トヨタは日本を代表する「ものづくり」企業です。トヨタのあり方は日本の「ものづくり」に大きな影響を及ぼします。目先の利益を優先して安全も技術の蓄積もないがしろにする本末転倒のやり方を、根本から反省し改めることが求められます。



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