2010年2月21日(日)「しんぶん赤旗」

“お手軽”賭博を助長

ネットや携帯で馬券購入5割超


 日本中央競馬会(JRA)の馬券(勝馬投票券)売り上げで、インターネットや携帯電話などを使って馬券を購入する「電話投票」の割合が初めて5割を超えたことが20日、本紙の調べでわかりました。競馬場に出向かなくても馬券が買える気軽さが特徴ですが、賭博の日常化、若年層の競馬への誘引などの問題も懸念されます。


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(写真)JRAのホームページを開くと、「電話・インターネット投票」のページに導かれます

 JRAの直近の「事業報告書」によると、2008年中の中央競馬の馬券発売金総額2兆7562億円余のうち競馬場などの施設内で売り上げた「現金投票」が1兆3366億円余(48・5%)にたいし、「電話投票」が1兆4196億円余(51・5%)となりました。1974年の電話投票制度開始以来、初めてこの比率が逆転、「電話投票が半数を超えた」(JRA報道室)といいます。

 過去5年間をさかのぼると、04年には総売り上げ2兆9370億円余にたいして電話投票は1兆2227億円(41・6%)でした。この間に、総売り上げが約2000億円減るなか、電話投票だけは2000億円近く、のびたことで比率が逆転しました。

 中央競馬の馬券売り上げは、97年の4兆162億円をピークに、売り上げ、競馬場入場者数とも大幅な減少が続いています。しかし、電話投票会員だけは96年の71万人から08年の307万人へと急膨張しています。

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(写真)電話投票会員の携帯電話からのインターネット馬券購入の画面

 電話投票制度は、競馬場や場外馬券売り場の混雑緩和などを理由に始められました。しかし、高額の保証金を預かったこと、電話がつながりにくいなどシステム上の問題点から利用はのびず、売り上げに占める割合は4%程度でした。

 しかし、近年のIT技術の発達、銀行の新しい決済システムとの融合がすすんだことで、特定の銀行に個人口座を持っていれば、携帯電話からでも即日電話投票会員になり、馬券の購入や当選金の払い戻し、馬券購入資金の追加までできるようになっています。

 「競馬法」ではもともと、馬券の販売や配当金の支払いは、競馬場内で、入場者にたいして行うものとしていました。

 その後の規制緩和がすすむなかで、競馬場に入場せずに馬券だけを買う形態が過半を占めるに至ったのは、中央競馬のあり方の大変質といえます。

 競馬ファンからは「馬と騎手が一体となって技とスピードを競うレースを楽しむのが競馬なのに、ただ賭けの対象にするというのはおかしい」という声があがっています。

 中央競馬会報道室の話 電話投票は、顧客のニーズへの対応、ノミ行為(暴力団などが私設馬券を売る行為)防止のために行っている。利便性が高いことから利用が広がっているが、競馬の開催は土、日曜日だけであり、賭博の日常化という批判はあたらない。


過度の営利追求に反対

日本共産党が批判

 競馬について日本共産党は、スポーツ性を重視した競馬の健全な発展を望む立場で、政府や日本中央競馬会が賭博性を高め、過度に営利を追求する動きを示した場合には、これに強く反対してきました。

 「電話投票」制度が本格化しはじめた91年4月の衆院農林水産委員会では、藤田スミ議員(当時)が、「法律にまったく顔をあらわさない馬券の場外発売がいわゆる電話投票だ」としたうえ、「家庭内にギャンブルを持ち込んで家庭破壊をおこさないという保証があるだろうか」と批判しました。


 日本中央競馬会(JRA) 農林水産大臣が監督する特殊法人で、資本金49億2412万9千円は全額政府出資。競馬は長く賭博の対象とされてきた歴史があり、戦後の日本では競馬法(1948年制定)で、刑法の賭博・富くじ販売禁止の例外とされました。JRAは国レベルで開催される中央競馬を一元的に運営する団体として54年に設立されました。巨額の「あがり」をめぐる利権や高級官僚の天下りなどの問題点も指摘されています。


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