2010年2月11日(木)「しんぶん赤旗」

公約違反 医療崩壊加速も

診療所再診料引き下げ


解説

 診療所の再診料を20円引き下げるという中央社会保険医療協議会(中医協)の決定は、「医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する」という民主党の政権公約(マニフェスト)に真っ向から反する重大問題です。

 医療費削減の「構造改革」路線のもとで、診療所の再診料は2002年〜06年の診療報酬改定で計30円引き下げられました。さらに、前回(08年)改定で導入された「外来管理加算5分ルール」によって、診療所は年間800億円もの減収になりました。

 有床診療所が減って病院の負担が重くなるなど、地域医療の中で診療所が果たす役割の低下は、病院勤務医の過重負担に直結し、医療崩壊の一因となってきました。地域医療再生のためには、病院と診療所の報酬を両方増やして連携を強化する必要があります。

 中医協の決定通りに診療所の再診料を20円引き下げれば、診療所は全体で200億円の減収になります。

 「外来管理加算5分ルール」は若干の要件緩和がされますが、削られた800億円のうち元に戻るのは120億円程度とみられます。民主党は総選挙前の「医療政策詳細版」に「5分ルール」の「撤廃」を明記しており、この点でも重大な公約違反です。

 診療側の委員は「医療崩壊の解消の一歩になるどころか、それを拡大する。許容できない」(安達秀樹・京都府医師会副会長)と強く抗議して退席し、審議は30分間にわたって中断しました。再開後も、診療側の賛意をえないままの決定となっています。

 中医協がこうした決定に至った大本には、鳩山政権が昨年末に決めた診療報酬の改定率があります。

 与党3党は政権合意で「医療費(GDP比)の先進国(OECD)並みの確保をめざす」とうたったにもかかわらず、10年度の診療報酬改定率は実質ゼロ。薬価を引き下げて確保した入院や外来の増額分は4800億円にとどまりました。その中で、再診料などの外来には400億円しかあてないという異例の枠をはめました。

 この結果、病院の再診料を増額する一方で診療所の再診料を減額するという「苦渋の判断」(遠藤久夫会長・学習院大学教授)に追い込まれたのです。

 中医協の中では、病院が600円、診療所が710円という再診料の格差をなくして統一すべきだという議論がありました。しかしこの格差は、「病院は入院を、診療所は外来を重点的に評価する」との名目で病院の再診料を低く抑えてきたことが原因です。危機的状況にある病院の再診料を大幅に引き上げるのは当然ですが、診療所の再診料を減額する理由にはなりません。

 鳩山政権は「医療・介護の再生」を訴えた政権公約に立ち返り、診療報酬の大幅アップに踏み出すべきです。(杉本恒如)


 5分ルール 外来管理加算は、外来で再診に訪れた患者に処置などをせず問診だけですんだ場合などの加算。08年度改定で、問診を5分以上しなければ加算しないという条件をつけました。



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