2010年2月5日(金)「しんぶん赤旗」

助成縮減路線を打ち出した文化庁予算案


辻 慎一

 2010年度文化庁予算案の詳細が明らかになりました。総額は、1020億2400万円で、4億8500万円(0・5%)の微増となっています。国家予算に占める割合は0・11%で変わりません。

重点支援は減額

 今回の予算案は、昨年の「事業仕分け」で文化予算がやり玉にあげられ、「予算の縮減」と判定されたことを受けて、策定されました。文部科学省は、「事業仕分け」にたいする国民の意見を募集し、文化分野については11万件をこえる意見が寄せられました。文科省によると、意見の「ほぼすべてが事業仕分けの結果に反対するもの」でした。

 ところが、文科省が打ち出したのは、こうした国民の意見に背を向ける方向でした。文科省が昨年12月25日に発表した「事業仕分け」にたいする「対応状況」という文書では、舞台芸術や映画の創造活動を支援する重点支援は「3年で1/2まで縮減する」とし、「地域の芸術拠点形成事業」は「2年で廃止する」といった予算縮減路線を打ち出したのです。これまで自公政権の「構造改革」路線のもとで、重点支援は削られてきましたが、縮減目標が打ち出されたのは初めてです。

 今回の予算案では、それがすでに具体化されています。重点支援は、前年度比4億1900万円減の45億9800万円となっています。「3年で1/2」とすると、11年度10億円、12年度にさらに10億円程度削られ、26億円前後になることが想定されます。最高時(03年度)79億2400万円の約3分の1に落ち込むことになります。

 子どもの舞台芸術体験事業も「事業仕分け」の対象となりました。予算案では名称が「子どものための優れた舞台芸術体験事業」に変更となり、49億7500万円で約11億円増えたように見えますが、「事業仕分け」の対象となった「学校への芸術家派遣」(09年度2億700万円)や、2007年度から始まったばかりの「舞台芸術の魅力発見事業」(09年度5億5500万円)などが廃止され、それが“吸収”された形となっています。

 また、独立行政法人である文化財機構(1億7500万円減)や日本芸術文化振興会(4億1500万円減)は引き続き減額となっています。

 他方、予算案では新規事業として、概算要求になかった「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」(16億円)、「地域の伝統文化の確かな継承と活性化」(16億円)がもりこまれました。また、「日本映画の振興」はほぼ同額でしたが、「メディア芸術の振興」で新規事業が増え15億1500万円となり、文化財保存も概算要求どおり認められたことから、全体としては微増になりました。

縮減路線転換を

 鳩山首相は施政方針演説で「文化立国」を打ち出し、文部科学省は文化予算を「過去最高」と宣伝しています。しかし、すでにのべたように、芸術団体をはじめ自主的な活動の助成はむしろ減額になっています。経済危機の影響もあり、オーケストラや劇団などの芸術団体の運営はきわめて厳しくなっています。そのときに助成縮減が実施されれば、その影響は計り知れず、鳩山政権がいう“ハードからソフトへ”とは矛盾することになります。

 日本共産党は、第25回大会決議で、「文化、スポーツの各分野への短期的な効率主義や成果主義の持ち込みによる予算縮減を許さない」ことをかかげました。その立場で幅広い芸術団体と共同を広げていきます。(つじ・しんいち 党学術・文化委員会事務局次長)



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