2010年1月25日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

地域の宝 見つけて

再生・振興へ調査すすむ

自治労連自治政策局長 木村雅英さんに聞く


 全国各地の自治体に働く労働者が、自分たちが住み、働く地域をもう一度見つめ直そうと、調査活動を行っています。題して「地域経済・地域づくりの調査・提言運動」。日本自治体労働組合総連合(自治労連)自治政策局長の木村雅英さんに、調査を通じて明らかになってきたことを聞きました。


 政府、財界が進めてきた「構造改革」の結果、地域経済が疲弊し、住民のくらしが立ちゆかなくなっています。

 私たちはまず、地域に足を踏み出して実態を調べ、住民と対話しながら地域経済の振興や地域づくりの可能性を見いだしていこうと、自治体問題研究所と共同作業で始めたのが、今回の調査・提言活動です。

 第1次調査地域として北秋田市(秋田県)、唐津市(佐賀県)、守口市(大阪府)、東大阪市(同)で取り組み、昨年3月に報告書をまとめました。第2次としていま、三重県津市、山口県周南市、静岡県浜松市、秋田県横手市、岡山県高梁市などで取り組みがすすんでいます。

つながり弱く

 これらの地域では、住民の皆さんに、アンケートで暮らし向きや生活条件・公共サービスの変化などに答えてもらいました。そのなかで「地域で暮らしていく上で一番困っている問題」で最も多かったのが「隣近所のつながりが弱くなった」という回答でした。

 これは少し意外でした。というのも、東大阪や守口市のような大都市圏ならある程度理解できますが、北秋田市や唐津市のような農村部、地方都市でも抜きん出ているのはなぜ?という感じがしました。地場産業や農業の衰退による働き手の流出、自治会や集落など地縁的なコミュニティー機能が弱まってきているのでしょう。

 こんなとき、暮らしや地域を支えるのが市役所の役割です。ところが市町村合併で広域化し、旧町村役場に残された支所には人も予算もなく、その役割を果たせなくなってきていることがわかりました。

 「暮らし向きが悪くなった」のも、合併された中心部から離れれば離れるほど悪化しています。

 しかし「合併は間違っていた」というだけでは展望が見えません。その中でどういう仕組みを作っていけばいいのか、自分たちは何をすればいいのか、が、アンケートや対話の中から少しずつ見えてきた、と、調査に取り組んだところから報告されています。

足踏み出せば

 いま、地方自治体で働く労働者が、身を縮めて、嵐が過ぎるのをじっと待つのか、それとも、誇りと展望をもって働けるようにがんばるのかが問われています。昨年の自治労連の大会で、職場と仕事を語り、住民との対話を広げる運動を打ち出しました。

 しかし「公務員攻撃」が激しい中で自治体労働者が地域に出て対話をすることにちゅうちょがあります。

 ところが足を踏み出したところでは、ほとんどが歓迎され、対話が弾み、組合員の確信になっています。

 地域経済をどうしていくか。それぞれの地域の宝物を生かした具体的な方向を探っていかなければなりません。さいわい、対話を通じて共同の可能性が広がり、今後の地域づくりの確かな担い手ができてきていると感じています。

 第1次の活動をいまの第2次の取り組みに生かし、さらには自治労連のすべての組織が参加して取り組めるよう力をつけていきたいと思っています。


■調査内容■

 (1)公表統計・資料分析を中心にした構造調査(2)住民の意識、状況を把握するためのアンケート調査(3)地域づくりにかかわる経済団体や協同組合、地域自治会などから直接声を聞くヒアリング―の3点。


「よくし隊!」を旗揚げ

北秋田市

地図

 北秋田市は2005年に、鷹巣町、合川町、森吉町、阿仁町の4町合併で生まれた市です。職員労働組合が中心になって「北秋田市をよくし隊!」を旗揚げし、150人の組合員全員が調査活動に参加しました。1200通のアンケートが回収され、市内33団体への訪問とアンケートをおこなっています。そこでは、就労の場がないため後継者が市外へ流出し、地域コミュニティーが崩壊しかけていることを危惧(きぐ)する声が多く出され、他方では「機会があれば地域経済の再生、地域づくりに参加したい」との意見も寄せられています。並行して、秋田大学と秋田県立大学の先生、学生らと限界集落や農業従事者の調査と、提言を行っています。

地元企業などと対話

佐賀・唐津市

地図

 唐津市は2006年に旧唐津市に浜玉町、厳木町、相知町、北波多村、肥前町、鎮西町、呼子町、七山村の8町村が合併しました。「こんな唐津をつくりたい」をスローガンに、市職員労組だけでなく教職員組合や新日本婦人の会なども一緒に実行委員会をつくって調査活動をおこなっています。アンケートでは車で1時間以上もかかる集落や、1日がかりで離島にも足を運び、市の全域から住民の声を集約しました。地元有力企業、信用金庫、JA、社会福祉協議会などからも話を聞き、対話を広げました。昨年10月の調査報告会では、調査に協力された地元の社長さんや区長会会長さんらも登壇し、どういう唐津をつくっていくのかを話し合っています。


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