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2010年1月12日(火)「しんぶん赤旗」

主張

自立支援法訴訟終結

障害者の尊厳回復への始発点


 障害者自立支援法の違憲訴訟をめぐり、原告・弁護団らと国(厚生労働省)は、訴訟の終結に合意しました。国は「合意文書」で、「障害者の尊厳を深く傷つけたことを心から反省する」と明記。応益負担制度の廃止と2013年8月までに障害者自立支援法を廃止し、新たな総合的な福祉法制を実施することを約束しました。

応益負担廃止を明確化

 障害者が生きるために不可欠な支援を「益」とみなして原則1割の自己負担を課す障害者自立支援法―。06年の同法施行後、過酷な負担が障害者を苦しめつづけ、これにたいして障害者らが「憲法25条の生存権などの侵害にあたり違憲」だとして、全国14の地方裁判所で71人が提訴していたものです。

 法施行後わずか4年足らずで、国が合意文書に「反省」を明記し、応益負担の撤廃、障害者自立支援法の廃止を明確にしたことは、大きな意味をもつものです。

 原告らが、厳しい生活の実態や苦しみを、勇気をもって裁判所に訴えつづけ、国がその事実の重みを受け止めざるを得なかった結果です。裁判で原告らは、「法律は障害を自己責任のように感じさせる。生きることへの利用料・応益負担はあまりにもひどい」などと訴えてきました。厚生労働省の調査(09年7月)でも、自立支援法実施前に比べ87・2%の人が負担増(月平均8518円)となっていることが明らかになっています。

 今回の訴訟は、「自立破壊」の障害者自立支援法に反対して、全国各地で展開された障害者、家族、関係者のかつてない大きな運動のなかから生まれたものです。国民の運動こそが政治を動かす力であることを改めて示しました。

 「合意」によって訴訟は終結するものの、障害者自立支援法の深刻な問題点を具体的に解決するためには、これからが正念場です。

 実際、鳩山政権は10年度予算案で、最大の問題点である応益負担制度について廃止までの暫定的な負担軽減策として約300億円の予算を約束しておきながら、決定したのは3分の1程度の107億円にとどまっています。医療支援は、軽減策の対象外とされています。

 障害者、家族らが緊急課題として強く要求している、食費・光熱水費などの実費負担廃止、事業所報酬を「月払い制」に戻すことなど多くの施策も、手つかずのままです。「構造改革」路線による社会保障費削減路線から拡充への抜本的転換に踏み切れていません。

新政権へ声と運動さらに

 今回の「基本合意」で、新政権に重い責任が課せられることになりました。「合意文書」では、障害者を中心とした「障がい者制度改革推進本部」で、新たな総合的福祉制度を制定するために、障害者の参加のもと十分な議論を行うことが明記され、この議論も今週から始まります。

 原告らは声明文で、「基本合意」の締結は「新たな出発にすぎない」として、全国の障害者、家族、関係者とともに、さらなる運動への決意を表明しています。

 国は「障害のある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことのできるものとするために最善を尽くす」(「基本合意文書」)と約束しました。これを実行させる世論と運動を、共に大きく広げていこうではありませんか。



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