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2009年12月29日(火)「しんぶん赤旗」

主張

労政審答申

「派遣切り」の教訓に立って


 労働者派遣法の改正のために、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)が答申を出しました。

 旧政権の法案が廃案になり、鳩山由紀夫新政権が改めて改正法案を提出するにあたって、雇用情勢の悪化をふまえた追加・変更の検討を求めていたものです。

「常用型」でも切られる

 答申には旧政権の法案にはなかった、新たな措置が盛り込まれました。登録型派遣、製造業派遣の「原則禁止」、違法があった場合に派遣先への直接雇用を促進する「みなし雇用」規定などです。これらは労働者を保護する立場で派遣法を改正しようとするなら、避けるわけにはいかない要です。

 問題は、その中身が「派遣切り」のような事態を二度とくりかえさない実効性あるものになっているかどうかです。

 日本共産党は2年前に抜本的な改正案を提案しましたが、その後の「派遣切り」とのたたかいをふまえて、少なくとも次のような改正が不可欠だと主張しました。

 (1)登録型派遣は、専門業務に厳しく限定し、原則禁止にする(2)製造業派遣は、どんな形であれ禁止する(3)違法行為があった場合、派遣先(受け入れ企業)が正社員として直接雇用する義務を負う「みなし雇用」の導入(4)均等待遇のルールの確立―などです。

 答申で問題なのは「原則禁止」とする登録型派遣、製造業派遣について、「常用雇用」は例外と認めていることです。同じ派遣でも、派遣会社に常用雇用(常用型)されていれば、仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型に比べて安定性があるというのです。

 これは昨年秋以降の「派遣切り」の教訓を見ていない議論です。「常用型」でも「登録型」でも関係なく、簡単にクビを切られているのが実態です。答申のままだと、「常用型」にしさえすれば製造業務でも派遣は自由勝手、景気の良しあしで「調整弁」として切り捨ての対象になる状態がそのまま温存されかねません。そうした「改正」さえ実施を3〜5年後に先送りするのは、文字通り論外です。

 「みなし雇用」の導入も、「派遣切り」の教訓を考えれば重要性はあきらかです。派遣労働は、偽装請負や派遣期間制限違反、業務偽装など大部分が違法という驚くべき状態にあります。違法行為があった場合、派遣先企業と派遣労働者とのあいだで期間の定めのない雇用契約(正社員)が成立しているとみなす明確な制度が必要です。違法が告発されてもクビを切ったらおしまいで、行政指導に従う義務がないではすまされません。

 答申は、派遣先が派遣労働者にたいして「労働契約を申し込んだものとみなす」としています。法律に違反したら、派遣先は正社員として雇い入れる義務を負うこと、労働者側には雇用契約を求める権利があることなど、契約が成立する保障を明確にすべきです。

抜け道を作らない議論を

 派遣労働のような低賃金で、身分保障のない非正規雇用を大量に増やしたいわゆる雇用破壊は、旧政権時代の最大の害悪の一つです。この是正は国民が新政権に求める緊急の課題といえます。

 労働者派遣法の改正を「人間使い捨て」から「正社員が当たり前」の社会に切り替える第一歩にするために、「抜け道」をつくらない真剣な議論が求められます。



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