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2009年12月27日(日)「しんぶん赤旗」

主張

ひき逃げ米兵

身柄引き渡し求め対米交渉を


 沖縄県読谷村で先月7日に起きた米兵による男性ひき逃げ死亡事件は、7週間もたつというのに、捜査が行き詰まったままです。

 沖縄県警は米陸軍トリイ通信基地所属の米兵を容疑者と特定し、事情聴取をすすめようとしましたが、本人は出頭を拒否しています。住民1500人が参加した抗議集会が開かれ、安田慶造読谷村長が「米軍はどれだけ県民の人権、幸せ、生命まで奪えば気が済むのか」と憤激しているのは当然です。日本政府は米軍に対して身柄引き渡しを強く要求すべきです。

事情聴取をも拒否

 事故車はフロントガラスが割れ、男性の髪の毛や血もついていました。米兵は運転していたことは認めたものの、「人をはねて死なせた認識はない」と話しているとのことです。

 事故車を近くの自動車修理工場に運び込んだのは「証拠隠滅」をはかった可能性があります。飲酒運転の疑いも濃厚です。事故直後、男性は生存していたともいわれています。放置して逃げ去ったとすればきわめて悪質です。

 沖縄県警は米兵の事情聴取を求めていますが、事故直後3日間警察に出頭しただけで、その後は出頭を拒否しています。捜査に協力する姿勢がないのは明らかです。

 トリイ通信基地の司令官は、「起訴後に(日本側の)要請があれば(引き渡しを)検討したい」というだけで、本人を出頭させるなどの協力姿勢は皆無です。在日米軍地位協定が、日本が起訴するまでは被疑者の身柄を米側におくと定めているため、できるだけ起訴を困難にする狙いがあるのは否定できません。

 過去には沖縄県警の逮捕請求を米軍が拒否した犯人の米兵が、起訴前に基地から国外に逃げた例もあります。「逃げ得は許さない」との批判が強まっていることを政府は直視すべきです。

 捜査を進展させ、起訴にもちこむには一刻も早い米兵の身柄引き渡しが不可欠です。ところが警察を管理する中井洽(ひろし)国家公安委員長は「捜査の段階で身柄の引き渡しを要求するというようなことは日米地位協定の中身からしてもあり得ない」と国会でのべました(11月27日参院外交防衛委員会)。岡田克也外相も同じことをいっています。身柄引き渡しを強く求める県民要求に背くもので、とうてい認めることはできません。

 背景として見逃せないのは、刑事裁判権についてできる限り日本側は起訴をしないという日米密約との関係です。政府・法務省は日米密約にもとづき「実質的に重要でない」ものは起訴しないことにしています。国家公安委員長や外相らがこの密約にそって、米兵の身柄引き渡しを要求しないとすれば、これほど卑屈なことはありません。

問われる政府

 今回のひき逃げ死亡事件は、沖縄県民がいかに危険にさらされているかを改めて示しました。米軍地位協定があることを理由にして、身柄引き渡しを要求しない態度はもはや許されません。

 鳩山由紀夫首相は事故直後、「起訴前でも引き渡しをしてもらいたい」とのべました(11月11日)。米兵の身柄引き渡しを実現するために米政府とただちに交渉を始めるかどうか、政府の態度が問われています。



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