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2009年12月18日(金)「しんぶん赤旗」

定数を半減、議会の権限縮小

河村名古屋市長 “強権市政”づくり

福祉削って ごまかし「減税」


 「河村市長、ちょっと待て!」。名古屋市の河村たかし市長(元民主党衆院議員)が市議会解散を脅しにして成立をもくろむ「市政改革ナゴヤ基本条例」(いわゆる「政治ボランティア条例」)。市民から、市議会の権限を縮小し強権政治をねらうものだと怒りの声が広がっています。(愛知県・広瀬幸男)


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(写真)市役所へ向かってデモ行進する「市民犠牲許すな連絡会」の人たち=9日、名古屋市中区

 河村市長は、11月定例市議会に、議員定数の半減、議員のボランティア化などを内容とする「政治ボランティア条例」を提案しました。市議会について、定数の半減、3期の任期制限、報酬の半減、政務調査費の廃止、党議拘束の禁止などが盛り込まれています。

 市長は、現行75の議員定数を「35」程度に削減し、さらに小選挙区制導入まで公言しています。

民主主義破壊

 もともと自治体で首長と議会の「二元代表制」がとられているのは、大きな権限をもつ首長に対して、議会に審議と議決権、調査や独自の提案権などを与えてバランスを形成したものです。この間、河村市長が提案した「特別秘書」創設など一部の議案が通らなかったことを口実に、市長の思う通りに議会がならないからといって、議会の機能を決定的に弱めようという提案をするなど、民主主義を根本から踏みにじるものです。

 小選挙区化は多様な民意の切り捨てであり、民意の「集約」で市長の翼賛議会とするねらいもみえます。

 議会の権限縮小は、民主党衆院議員時代に「河村ビジョン」で道州制導入とセットで市町村議会の「発展的解消」までうちだすなど、もともと河村市長が主張してきたものです。

 小林武愛知大学法科大学院教授(憲法学)は「市長の考え方は憲法と地方自治法に照らして全く成り立たない理屈だ。議会制度を破壊し統治構造を変えようとする手法は、小沢民主党幹事長の『国会改革』と実によく似ている」と指摘します。

「だまされた」

 河村市長は、「議会改革」とともに、「市民税減税」、「地域委員会」を、「市政改革」の3本柱に位置づけています。

 しかし、提案された「減税」の内容は、10%一律減税で、金持ち、大企業を優遇する一方、低所得者には減税なし。その財源は「福祉も例外ではない」として、来年度予算から福祉・教育向けを中心に147億円削減する方針。その福祉削減の“受け皿”となるのが「地域委員会」で、市長は、待機児童や不登校対策は「地域で見てくれ」と発言しています。

 重度障害の娘をもつ女性(62)=中村区=は、「河村市長にだまされた。市政が少しでもよくなればと期待して投票したのに」と、怒りをあらわにします。

 9日閉会した定例市議会では、市長の減税案は民主党だけの賛成で否決されたものの、金持ち・大企業優遇の市長原案の本質を変えない一部の修正案を自民、公明両党が提案し可決されました。日本共産党は、市長原案、自・公修正案のいずれにも反対するとともに、「庶民減税」を提案しました。「地域委員会」も、モデル事業費をふくむ補正予算案を民主、自民、公明が賛成し可決しました。

 18日からの臨時議会では、市長が自・公修正案の再議を求め、修正案の可決には出席議員の3分の2の同意が必要となり、否決されれば市長原案が再び審議されます。

 「議会改革」の「政治ボランティア条例」案は、民主、自民、公明によって継続審議になりました。反対したのは日本共産党だけでした。

 河村市長は、来年の2月議会に定数半減を前提とした「区割り」条例案を提出するという報道もされています。

広範な共同を

 市民のなかには「市長の言い分がすべてとおらないからといって議会をかえてしまおうというのはおかしい」との声が広がっています。

 市内では福祉切り捨てに抗議する集会やパレードが繰り返し行われ、国保料引き下げを求める署名や保育園・市民病院の廃止民営化に反対する運動も前進しています。

 日本共産党も参加する「革新市政の会」の矢崎正一代表は、「日本の民主主義にかかわる大問題。河村市政の本質を広く市民に伝え、広範な共同で市長の企てを阻止したい」と語っています。



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