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2009年11月14日(土)「しんぶん赤旗」

日米会談 普天間問題

県民の願い反映の保証なし

従来の発想から抜け出せず


 「グローバル(地球規模)な課題では前向きだが、ローカル=日米2国間の問題では明確な方向を示せない」。民主党政権に対する、ある国際政治学者の指摘が今回の日米首脳会談にそのまま当てはまりました。

 鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領による首脳同士の信頼関係構築に主眼が置かれた最初の日米首脳会談(9月、ニューヨーク)に続く今回の会談は、首相が掲げる「緊密で対等な日米関係」の具体的な中身が問われていました。

 その中で最大の懸案は米海兵隊普天間基地の「移設」問題です。米国いいなりに基地を沖縄県民に押し付け、日米軍事同盟の恒久化を図ってきた自公前政権の路線から脱却できるかどうかの試金石といえるテーマです。

 結局、核軍縮や地球温暖化防止での共同文書や、5年間で総額50億ドルのアフガニスタン支援策を急きょまとめるなど、「グローバル」な課題での“成果”を演出する一方、普天間基地問題では「早期に結論を得る」とし、来週以降に開かれる普天間「移設」問題に関する閣僚級の作業部会(ワーキンググループ)に委ねられました。

 民主党はもともと、同基地の「県外・国外移設」を主張していましたが、米側が2006年5月の合意どおり、米海兵隊キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市辺野古)への新基地建設を要求すると、閣僚から「県外移設」を断念する発言が相次ぎました。簡単に圧力に屈するのは、「抑止力維持のために沖縄の米軍は必要」という、旧政権とまったく同じ発想があるからです。

 しかし、8日の県民大会では2万1000人が参加して新基地建設反対・普天間基地の閉鎖・撤去を主張し、沖縄の地元紙による世論調査で7割前後の県民が新基地建設に反対。このため、民主党政権は立ち往生しています。鳩山首相も会談で「県外・国外移設という公約に沖縄県民の期待が強まっている」と述べざるをえませんでした。

 ただ、鳩山首相は「前政権の合意も重い」とも発言しており、沖縄県民の願いは作業部会の結論に反映される保証はありません。

 2国間の問題で従来の発想から抜け出せないのは、米側も同様です。辺野古への新基地建設を「唯一、実現可能」として強圧的に押し付けたゲーツ米国防長官からは、日本を属国扱いする従来の政権と同様の姿勢が垣間見えました。これに対しても、日本国内はもとより、米国でも批判が起こっています。

 会見でオバマ大統領は、「日米は対等なパートナーだ」と強調。「米軍再編でもそれ(対等性)が反映されている」と言いましたが、「新基地建設なしに土地を返さない」(ゲーツ長官)との発言に、米軍再編が「対等」であると感じる沖縄県民は皆無でしょう。

 重大なのは、拡大抑止や軍事情報の保全、ミサイル防衛や宇宙の軍事利用といった、新しい軍事同盟強化の方向を打ち出したことです。このような軍事協力を基礎としている以上、新しい日米関係は見えてきません。(竹下岳)



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