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2009年11月7日(土)「しんぶん赤旗」

温室効果ガス規制

米議会 議論白熱

反対の共和党“不安”あおる


 【ワシントン=小林俊哉】2013年以降の地球温暖化対策の国際協定で合意をめざす国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を12月に控え、米国での温室効果ガス規制をめぐる議論が白熱しています。反対する野党・共和党が“攻勢”を強めているためです。


 4日、下院外交委員会は交渉担当者のスターン気候変動問題担当特使を招いて公聴会を開催しました。同氏は「(COP15での合意に向けた)交渉の前進が遅すぎる」と率直に指摘。それでも、「今後の交渉のための単なる行程表の合意」ではなく、「現段階で可能な最も強力な合意」を目指したいと意欲を示しました。

中国をやり玉

 これに対し、共和党側は、世界最大の温室効果ガス排出国・中国が米国と同様の責任を負わないとして、新たな国際協定づくりを「米国の国益を損なう」(ロス=レーティネン議員)と批判。「米国には厳しい規制を自発的に行うよう求めながら、途上国には抜け道を認める」(同氏)、「米国民が他の国より余計に負担を負わされる」(ローラバッカー議員)などと「中国」をやり玉に挙げました。

 これに対してスターン氏は、「問題は中国が行動しているかどうかではない」として、中国が環境対策で掲げている政策を挙げて反論。「むしろ心配は、米国が中国の後を追いかける事態になりはしないかということだ」として、米国での国内措置の強化の必要性を示しました。

ボイコットも

 共和党は、上院で審議中の温室効果ガスの排出削減をめざす気候変動法案にも徹底抗戦する構えです。5日の環境・公共事業委員会の採決でもボイコット作戦に出ました。オバマ大統領は、気候変動対策に向けた努力を倍加すると国際公約していますが、共和党の議論は、先進国と途上国の間に残る意見の食い違いを逆手に取り、対立をあおる手法で、国民に不安を広げる作戦です。

 反対論の背景には、気候変動法案に反対する産業界の意向があります。4日の公聴会でも、共和党のマンズーロ議員は、再生可能エネルギーの比重を高めるための産業構造の転換には、既存産業での失業が伴うとして、気候変動対策が“国策による失業増”でもあるかのように主張しています。

割れる産業界

 しかし、産業界も一枚岩ではありません。化石燃料への依存を低減するエネルギー・産業政策を、新しいビジネスチャンスとみる向きもあるからです。米国内外の業界団体が参加する米国商業会議所は気候変動法案に反対の立場ですが、この間、新エネルギー開発に取り組む有力企業が異論を表明して脱会する騒ぎが起こっています。

 「地球は丸い。しかし、共和党には地球は平べったいと考える者がいる」と評したのは与党・民主党のデラハント議員です。

 人為による地球温暖化という科学的知見を踏まえて産業構造の転換を視野に入れた政策をとるのか、科学を無視して既得権益を維持するのか。米議会の論争が続いています。



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