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2009年11月3日(火)「しんぶん赤旗」

主張

水俣病大検診

未解決の患者すべての救済を


 民間の医師や水俣病の被害者7団体でつくる「不知火海沿岸住民健康調査実行委員会」は、9月に実施した熊本、鹿児島両県の不知火海沿岸住民に対する大規模検診の分析結果を公表しました。

 水俣病特有の症状をもつ人のなかには、公害健康被害補償法(公健法)の指定地域以外の患者や、国が「新たな水俣病の発症はない」とした1969年以降生まれの人たちも数多く含まれています。大検診の結果は国の認定基準が被害実態を反映していなかったことを示しています。国による被害実態調査と認定基準の根本的見直しが不可欠です。

被害実態うきぼりに

 今回の大検診は被害実態を解明するために行われたものです。行政責任を逃れるために、調査対象を約1万人に絞り込んだ不完全な調査しかしてこなかった国への、大きな問題提起となりました。

 1044人が検診を受けました。水俣病の未認定者974人のうち93%にあたる904人が、手足の先のしびれや口周囲の感覚障害など水俣病特有の症状であると診断されました。

 見過ごせないのは水俣病の認定を申請していない人が867人と多いことです。家族に水俣病患者がいることがわかると娘が嫁にいけないとか、地域の付き合いができなくなるといった「差別」を理由にあげた人が396人もいます。「差別」を恐れていまなお申請さえできない被害者が、水俣病に苦しみながらひっそりと暮らしている実態がみえてきます。

 「情報がなかった」からという人も354人います。こうした実情をつかまないで水俣病被害者救済の道を開くことなどできるはずはありません。

 公健法の指定地域以外の上天草市などから受診した213人中、199人が水俣病の症状を確認されたことは重大です。被害者が広い地域にいることを示しているからです。公健法の指定地域そのものの不備が確認された以上、指定地域の見直しも必要です。

 69年以降生まれた人や不知火海沿岸に移り住んだ少なくない人たちに症状が確認されたことも問題です。68年に加害企業のチッソが有機水銀の流出をやめた以後は、「新たな水俣病の発症はない」といってきた国の説明のいいかげんさが露呈したのです。水俣病被害を小さく見せてきた国の卑劣な態度を容認するわけにはいきません。

 大検診の結果、国の水俣病対策の全体に不備と欠陥があることがわかりました。検診は民間のやったことといって無視するのではなく、国がみずから不知火海沿岸住民の健康診断を行い、被害の実相を明らかにする必要があります。

特措法は廃止せよ

 指摘しなければならないのは、7月に自公と民主が駆け込みで成立させた「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」では救済は不可能だということです。水俣病認定申請者や保健手帳保持者の多くが救済の対象外にされるおそれがあります。

 特措法には国とチッソを免罪する問題もあります。水俣病の被害者を切り捨てる特措法は廃止するしかありません。

 そのうえで被害者を切り捨ててきた国の水俣病認定基準を見直し、被害者すべてを救済する恒久的対策をつくるべきです。


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