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2009年10月31日(土)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議


 日本共産党の市田忠義書記局長が30日の参院本会議で行った代表質問は次の通りです。


 私は日本共産党を代表して鳩山総理に質問します。

自公政権退場の歴史的審判――その根本に何があるか

写真

(写真)代表質問する市田忠義書記局長=30日、参院本会議

 先の総選挙で国民は、くらしと平和をこわしてきた自民・公明政権を退場させるという、歴史的な審判をくだしました。

 日本共産党は、総選挙で示されたこの主権者の意思を実現するために全力を尽くす決意です。

 自公政権にたいする批判の根本にあったものはなんだったでしょうか。社会保障制度から、年齢や収入によって、それをもっとも必要とする人々が排除されてきたこと、働く能力も意欲もあるのに、仕事につけず、ついた人も低賃金で働かされ、モノのように使い捨てられる、こんなことが大手を振ってまかりとおる社会にされてしまったことです。農業も中小零細企業も衰退させられ、くらしも経済も未来への展望を描けなくなってしまいました。外交に目を転じれば、誰の目にも間違いが明らかになっているイラク戦争を正しかったと言いはり、アメリカの言うことであればどんなことにでも付き従うという自主性を欠いた外交にも審判はくだされたのです。

 総理は、「総選挙の勝利者は国民一人一人です。その、一人一人の強い意思と熱い期待に応える」と述べられました。しかし、いま国民がもっとも望んでいる重要問題については、なんら具体的方策は明らかにされませんでした。

雇用問題――企業の自主性任せでなく緊急に法的規制を

 まず雇用問題です。

 年末を控えて事態は深刻です。失業率も有効求人倍率も過去最悪の水準です。すでに失業していて、新たな就職先がみつからないまま失業給付が切れてしまった人が次々と生まれています。このままでは昨年末の「派遣村」を上回るような事態になりかねません。

 しかし、先日政府が発表した「緊急雇用対策」では、失業給付が切れる人の数を把握するだけで、給付期間の延長の措置を講ずることにはなっていません。雇用保険法27条にもとづく「全国延長給付」の発動を決断すべきではありませんか。

 また、若者や、不安定な働き方を強いられてきた人々は、連続した勤務に就けなかったために、雇用保険の対象からさえ排除されています。こうした失業者に対して、雇用保険の特例を設けるなど生活支援を緊急に行うことを求めます。

 一部の大手自動車会社などはいま、増産に転じています。ところがトヨタなどはそれを安定した雇用につなげるのではなく、かつて使い捨てた期間社員に「あなたの技術が必要です。とりあえず3カ月だけ」などと勧誘し、またぞろ短期の「使い捨て」を前提とした採用ばかりをふやしています。

 総理、安定した雇用は企業の自主性だけにまかせていては守れません。それは、この間の、財界の要求にもとづく労働法制の規制緩和が雇用破壊と大量のワーキングプアを生み出したことを見れば明らかです。いまこそ、雇用を守る社会的ルールを確立することが不可欠です。「雇用は正社員が当たり前」という社会の実現のために、労働者派遣法の抜本的改正を行うこと、期間社員など直接雇用についても、期限を限った働かせ方への法的規制を緊急の措置として行うべきではありませんか。

中小企業――借金返済だけでなく仕事の確保含めた緊急対策を

 日本の企業の9割以上、雇用の7割を占める中小零細企業は文字通り「日本経済の主役」であります。その中小零細企業がいま危機にひんしています。

 借金返済に困っている企業への支援はもちろん必要ですが、それだけにとどまらず仕事の確保を含めた総合的な緊急対策が求められています。とくに、(1)中小零細企業向けの雇用調整助成金の抜本拡充、(2)大銀行による貸し渋りをやめさせ、信用保証制度の拡充・改善で資金繰りを支える、(3)大企業による違法な「下請け切り」をやめさせる、(4)倒産・廃業しないための休業補償・直接支援を行うこと。

 わが党は、この四つの課題に直ちに取り組むべきだと考えますが、総理の明確な答弁を求めます。

社会保障――後期高齢者医療制度、求められるのはただちに廃止すること

 社会保障の削減から拡充への転換も急務です。とりわけ、世界にも例のない、年齢で医療を差別する後期高齢者医療制度は、総選挙で「ただちに廃止するべきだ」という国民の審判がくだりました。総理は「廃止に向けて新たな制度の検討をすすめる」と述べられましたが、いま求められているのはただちに廃止することです。本院においてはすでに昨年6月、廃止して老健制度に戻すという法案を民主党も賛成して可決しています。一日でも長くこの制度が続けば、その分、新たにこの制度に組み込まれる人が増えます。保険料も上がり続けます。先送りすることなく、直ちに廃止することを求めます。

薬害肝炎――恒久対策の支援法、今国会での実現に決断を

 いま薬害肝炎被害者は、B型、C型を問わず、すべての政党が約束した肝炎患者の恒久対策のための支援法制定をギリギリの思いで待ち望んでいます。総理、いまこそこの約束をはたし、今朝の答弁のような、「早期に適切に」ではなく、今国会で直ちに支援法を実現させるべきではありませんか。総理の決断を求めます。

温暖化ガス――25%削減へ国と産業界との「公的削減協定」締結を

 総理は、2020年までに1990年比で温暖化ガスを25%削減するという目標を掲げられました。問題はこれをどうやって実現するかであります。一番のポイントは温暖化ガスの最大の排出源である産業界、全体の8割を占めていますが、ここに削減のための実効ある措置をとらせることできるかどうかにかかっています。ところが鳩山政権の政策には、この最も重要な点が欠落しています。日本経団連の自主行動計画まかせでは削減がすすまないことは、京都議定書締結以降、排出量が減るどころか逆に増えてきたことをみても明らかです。EUなどでは、排出権取引制度や環境税にとどまらず、国と産業界との間で「公的削減協定」を締結し、削減措置を講じています。日本経団連などは「国際競争力が損なわれる」などと激しく抵抗していますが、日本の大手自動車メーカーなどはEU内で操業するときには、公的削減協定に参加しています。EUではできても日本ではできないというのでしょうか。こんな横暴勝手を許さず、「削減協定」を結ぶべきだと考えますが、総理の所見をうかがいます。

日米関係――基地撤去は対米追随でなく国民の意思を背景に真正面から交渉を

 最後に日米関係についてです。

 住宅密集地の真上を米軍のヘリコプターが飛び回るという世界でも異常な普天間基地の撤去は一刻の猶予も許されません。同時に、米軍の基地被害に苦しんできた沖縄県民の思いは、辺野古への新基地建設も、県内の移設も絶対に許せないというものです。

 総理の選挙中の党首討論での発言は、県外もしくは国外移設でした。ところが先日のゲーツ米国防長官の来日を境に、この公約は踏みにじられつつあります。岡田外相は「県外への移設は事実上選択肢とは考えられない」とのべ、北沢防衛大臣は辺野古への移設を事実上容認されました。総理は「沖縄の方々が背負ってこられた苦しみや悲しみに十分に思いをいたし、地元の皆さまの思いをしっかり受け止める」と述べられましたが、もし岡田外相や北沢防衛大臣の発言を総理がきっぱりと否定されないのなら、政府がしっかり受け止めたのは沖縄県民の思いではなくアメリカの思いではありませんか。

 もともと在日米軍基地は、日本の安全保障上の抑止力などではなく、アメリカの世界戦略上の必要性から置かれているものであって日本防衛のためでは決してありません。ベトナム侵略戦争でもイラク戦争でも、沖縄の基地がその出撃基地として使われたことを見ても明らかであります。

 総理は「最後は私が決める」と言われましたが、問題はどういう決断をされるかであります。アメリカ政府に基地撤去・国外移設の要求を受け入れさせるためには、これまでの自公政権のとってきた対米追随の姿勢を一変させ、本腰を入れた真正面からの交渉が不可欠であります。国民の意思を背景に米軍基地を撤去させた例は、古くはフィリピン、最近のエクアドルなどいくつも例があります。こうした立場に立つことこそ、対等な日米関係への重要な一歩であることを指摘するとともに、総理のこの問題についての基本的な考えをうかがって、質問を終わります。


市田忠義書記局長代表質問への鳩山首相の答弁

(要旨)

 【雇用保険制度】平成21年の改正雇用保険法によって、特に再就職が困難な方々を個別に判断し、給付日数を60日分延長した。それによって90日プラス60日になった。そのことによって24万人の受給者に対して延長を行っている。雇用保険財源が限られるなか、全国延長給付の発動には極めて慎重な判断が求められる。今後とも個別の延長給付の活用などによって雇用のセーフティーネットを整備し、国民の安心感を高めていくよう努めたい。

 【失業者への生活支援】これまで、雇用保険を受給できない失業者に対する第二のセーフティーネットとして、生活支援の融資や職業訓練期間中の生活保障、さらに住宅手当の支給などを実施してきている。さらに、今年の年末年始に休職中の困窮者が安心した暮らしができるよう緊急雇用対策を策定した。今後、この対策に基づいて失業者への生活支援や再就職を機動的に行っていく。

 【労働者派遣法】派遣労働者の保護を強化する方向での法改正を検討中で、有期雇用のあり方については、現在厚生労働省の研究会で検討を行っている。その成果を労働政策審議会での審議につなげ、必要となる施策を検討して実施していく。

 【中小企業への総合的支援】今月23日に取りまとめた緊急雇用対策において、雇用調整助成金の支給要件の緩和を決めた。それに基づいて全力で雇用確保に取り組んでいく。中小企業の資金繰りの不安を解消するため本日閣議決定したいわゆる貸し渋り・貸しはがし法案を一日でも早く成立させ万全を期していく。さらには公的金融機関に対して、緊急保証やセーフティーネット貸し付けの活用を促進し、条件変更への積極的な対応も徹底していく。違法な下請け切りなどを防ぐため、独占禁止法、あるいは下請け法の厳正な執行に取り組んでいく。さらに、新たな法制度の整備に取り組んでいく。倒産や廃業を防いで事業を続けていくには、一時しのぎの対策ではいけない。新しい仕事をいかに獲得していくか。そこにつながる支援が必要だと考えている。技術開発、あるいは販路改革への支援、官公需に関する情報提供の充実などを行っていくことを決めた。

 【後期高齢者医療制度】高齢者を年齢で差別する大変けしからん後期高齢者医療制度は廃止する。廃止後の制度のあり方について、政権発足後に寄せられた各方面からの意見を踏まえ、老人保健制度に戻すということより、幅広い国民の納得と信頼が得られる新たな制度を創設したい。決して先送りしたいと思っているのではない。高齢者の視点に立った真の改革を断行したいと思っており、厚生労働大臣の下に近く検討会議を設置し、新たな制度の具体的なあり方の検討を進めていく。

 【肝炎患者の支援】肝炎対策にかかわる法制定について従前から肝炎患者から大変強い希望をいただいている。法制定を求めた署名も数多く集められている。大変大事な問題だと思っており、肝炎患者の思いが早期にかなえられるようにすることが大事だと考えているので、みなさんと一緒に適切に対応したいと考えている。

 【温暖化対策】国と産業界との間での公的削減協定を締結する必要性について。25%の削減目標という大変大胆な目標達成のためには、国内の排出量取引制度、あるいは再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入、あるいは地球温暖化税といったものの検討をはじめ、あらゆる政策を総動員しなければ、なかなか達成できないと考えている。具体的な政策の内容については、今後国際交渉における理論がどのようになっていくか、これをリードしていかなければいけないと考えているが、地球温暖化問題に関する閣僚委員会等においてしっかり検討し、決めていきたい。

 【普天間基地問題】在日米軍の再編に関し、安全保障の観点からも大変重要だという認識の下、過去の日米合意の経緯も慎重に検証していく必要がある。一番大事なことは、国民のみなさん、特に沖縄県民の思いを受け止めて解決していきたいと思っており、私の方から、普天間の移設に関して、外務大臣と防衛大臣に対し、いろんな選択肢があるのではないか、それを早く調査し結論を出していこうではないかと指示したところだ。最後は私が判断して決めるので、決してこのことで対米従属だと思っているわけではない。



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