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2009年10月25日(日)「しんぶん赤旗」

主張

JR西日本の不正

責任を徹底して追及すべきだ


  100人以上の犠牲者を出した2005年4月のJR福知山線の脱線事故をめぐり、JR西日本が国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(当時)の委員に働きかけ、公表前の報告書入手や自社に有利になる改ざんまで働きかけていた不正についての経過報告書が、前原誠司国交相に提出されました。

 報告書は、JR西日本の不正な働きかけが組織的で大がかりなものだったことを、あらためて浮き彫りにしたものです。

上司が命じ、組織的に

 JR西日本は、経過報告書の提出にあわせ、不正にかかわった山崎正夫取締役(前社長)と土屋隆一郎副社長の辞任を発表しました。2人が責任を取るのは当然ですが、それで一件落着にされたのではたまりません。関係者とともに、JR西日本の責任が徹底して追及されるべきです。

 事故調に対するJR西日本の不正な工作が、山崎前社長や土屋前副社長が中心になり、複数のルートで、組織的に行われたことは報告書などから明らかです。

 山崎前社長は、旧国鉄時代の手づるをたどって事故調の委員に働きかけ、公表前の報告書の一部を事前に入手、新型ATS(自動列車停止装置)の設置が遅れたことなど、責任にかかわる部分を削除する改ざんまで求めていました。

 JR西日本の事故対策の責任者だった土屋前副社長は、事故対策審議室の部下に指示して事故調の委員に接触させ、報告書の入手などを働きかけました。上司が部下に命じて報告書の入手や改ざんを働きかけるのを、“組織的”といわず、なんと呼ぶのか。

 垣内剛元社長も、報告書についての意見聴取会が開かれる直前、「友人」という旧運輸省出身の委員に接触しています。食事代はJRもちです。個人的な行動などではありません。

 JR西日本が接触した事故調の委員は、鉄道事故を担当する6人の委員中4人にのぼります。しかも働きかけの事実を多くの社員が知っていました。不正な工作が、組織的で大がかりなものだったことは明らかです。

 JR西日本が旧国鉄OBなどに、意見聴取会の「公述人」になるよう要請し、公述内容について働きかけていたことも明らかになっています。公述人になれなかった人には現金を渡していました。事故調の調査や警察・検察の捜査に、JR西日本にとって不利になる資料を隠し、口裏あわせをしていた疑いもあります。一連の不正工作が、事故原因を隠ぺいし、責任追及を免れる目的に沿って行われた疑惑はきわめて濃厚です。

安全軽視の体質変わらず

 多くの犠牲を出した福知山線の脱線事故は、無理な運行を強いた過密なダイヤ、安全対策の遅れ、懲罰的な職員管理などが原因になって引き起こされました。その背景になったのが、「稼ぐ」を目標の第一に掲げた、安全軽視で、もうけ本位の経営体質です。

 神戸第1検察審査会は22日、すでに業務上過失致死傷罪で起訴されている山崎前社長に加え、3人の歴代社長についても「起訴相当」と決定しました。

 安全な輸送は大量輸送機関の使命です。重大な事故を引き起こしてもなお体質が改まらないのでは、JR西日本に鉄道会社として存続する資格はありません。


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