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2009年10月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

政府税調

税制の民主的原則を取り戻せ


 政府税制調査会(首相の諮問機関)の実質的な審議が20日からスタートしました。

 鳩山内閣は8日、従来の政府税調を廃止し、藤井裕久財務相を会長とする新たな政府税調を発足させました。政府税調には重要事項を審議する「企画委員会」を置き、峰崎直樹財務副大臣が責任者となっています。

 政府税調の発足に当たって鳩山由紀夫首相は、民主党マニフェスト(政権公約)と3党連立合意に盛り込まれた税制項目の検討など7項目を「諮問」しています。

「社会で支え合う」と

 民主党マニフェストに関連して峰崎副大臣は、15日の記者会見で「子ども手当の導入と扶養控除の廃止の時期は、一致するのが望ましい」とのべました。藤井財務相も扶養控除の来年度からの廃止は「あり得る」と認めています。

 子ども手当について政府は「子どもを社会で支え合うということ」だと説明しています。

 子育て支援の手当の拡充は必要です。しかし、扶養控除の廃止で財源をつくるやり方では、手当をもらえる中学生以下の子のいない世帯で、23〜69歳の扶養家族がいる世帯には一方的な増税になります。こんな庶民増税に財源を求めるなら、子育てを「社会で支え合う」ことにはなりません。

 鳩山首相は政府税調への諮問で、「支え合う社会の実現に必要な財源を確保」する観点から、税制の年度改正とともに将来ビジョンの審議を求めています。

 「社会で支え合う」税制を考えるとき、決定的に重要なのは「応能負担」の原則です。

 財界は消費税増税を要求する大義名分として「国民全体で支え合う」ことを強調しています(日本経団連、10月2日の税制提言)。

 財界の議論には大きなごまかしがあります。何より「国民全体」の中に大企業を入れていません。

 「国民全体」「社会」と言っても貧困にあえぐ若者や高齢者、ひとり親家庭もあれば巨額の報酬を手にする大企業経営者、ばく大な配当を受け取る投資家もいます。所得の少ない人には少なく、所得の多い人にはより多く負担してもらう、ぎりぎりの生活費には課税しない―。こうした「応能負担」の原則を守らなければ税制の民主主義と公平を確保することはできません。「社会で支え合う」税制とは本来、「応能負担」の原則を大事にした税制にほかなりません。

 この点で政府税調の議論には大きな懸念があります。藤井財務相は新聞インタビューで、株式配当の軽減税率を維持する考えを示しました(「日経」20日付)。配当が何億円あっても税率はわずか10%という軽減税率の維持は「支え合う社会」とは正反対です。

「応能負担」の確立を

 税制の将来ビジョンについて峰崎副大臣は、「消費税を含んで税制全体の在り方をきちんと出していきたい」と説明しています。鳩山首相も消費税の議論を否定していません。

 消費税は、市場で力の強い大企業は価格にすべて転嫁することによって負担を免れる税金です。低所得者ほど所得に対する負担割合が重い消費税は、「応能負担」の原則を踏みにじる税制です。

 税制を議論する大前提として「応能負担」の原則を取り戻し、しっかり確立するよう求めます。



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