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2009年10月10日(土)「しんぶん赤旗」

主張

大阪府庁舎移転

府民不在の計画直ちに断念を


 大阪府の橋下徹知事が、開会中の9月府議会に府庁舎の移転計画を改めて持ち出し、府民の批判を呼んでいます。

 大阪城にも近い現在の府庁舎を、大阪湾を埋め立てた南港の咲洲(さきしま)地区に建つ、大阪市の破たんした第三セクタービル(WTC)に移転させる計画は、この春知事が提案し、大差で否決されたものです。それを再提案するなどというのは、まさに常軌を逸した異常なものです。

再提出しても問題は同じ

 橋下知事が再提案した移転計画は、否決されたものと同じで、問題点をなんら解決していません。

 もともと府庁舎は古くなり、耐震性に問題があるというので、建て替えや補強工事が検討されていたものです。それを突然、WTC(ワールドトレードセンター)のビルを府が買い取り移転すると、知事がいいだしたのが発端です。

 知事はWTCへの移転が「庁舎問題を抜本的に解決できる唯一の選択肢」といいます。しかし知事が示した試算はごまかしだらけで、現庁舎の耐震補強案が、WTCを買い取り大幅改修する案より安上がりなのは明らかです。日本共産党府議団の試算では耐震補強の費用は496億円ですが、移転案には637億円かかります。

 府庁舎問題のきっかけになった地震対策からみても、埋め立て地に建つ超高層のWTCには長周期地震動の影響など多くの問題が指摘されています。第一、市内の中心部に立つ現庁舎と違い、交通手段が限られ、橋を渡らなければならないWTCでは、いざというとき集まれる職員が限られます。

 府が職員に対しておこなったアンケート調査でも、「災害時の初期対応が大幅に遅れるのではないか」などの不安が相次ぎました。一刻も早く住民を被害から守ることを考えれば当然の懸念です。

 知事は、WTCを「関西州の州都に」などといいますが、現在の都道府県を廃止する「道州制」の導入は、府民が求めたわけでも、関西の府県が賛成しめどが立っているわけでもありません。夢のような話をぶち上げ、府民に巨額の負担を負わせ、本来府としてやるべき仕事を後回しにするのは、まったく筋が違います。

 WTCは、関西財界の要求を背景に、大阪市が、府が建設した「りんくう(臨空)ゲートタワービル」に高さを張り合って建設したものです。WTCなどを中核とする開発には、これまで1兆円近くをつぎ込みましたが完全に破たんし、市は「終結」を宣言しました。破たんの責任をあいまいにして、そのつけを府民に押し付けるのは、許されません。

財界要求に応えるだけ

 関西財界は、“お荷物”となってきたWTCを府に買わせるだけでなく、それをきっかけに府と市に咲洲地区の再開発を進めさせ、もうけを拡大することまでねらっています。まさに破たんずみの大型開発路線の継続・復活です。

 関西財界は、移転案の否決に不満を鳴らし、関西経済同友会は9月までにと期限をきって「府庁のWTC移転が可能となる環境を整備せよ」と求めてきました。橋下知事がやっているのは、結局財界の振り付けどおりです。

 財界本位、住民無視の移転計画に、府民が「ノー」を突きつけるのは、当然ではありませんか。


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