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2009年9月28日(月)「しんぶん赤旗」

すすむ埋め立て 住民が差し止めへ訴訟

沖縄・泡瀬 干潟は命の宝庫

90種の鳥類・360種以上の貝・126種の海藻…


 沖縄県の泡瀬(あわせ)干潟は沖縄東海岸に広がる沖縄最大の干潟です。広さ約265ヘクタール。約90種の野鳥や渡り鳥が見られ、360種以上の貝、13種の海草、126種の海藻などが確認される「生物の宝庫」が、開発事業によって埋め立てられようとしています。泡瀬干潟を守る連絡会の前川盛治事務局長(64)と歩いてみました。(竹原東吾)


地図

 干潟の一画を覆う“砂だんご”の粒々。「これはミナミコメツキガニが砂を食べ、有機物をこしとり吐き出したものです」と前川さん。

■緑のじゅうたん

 ミナミコメツキガニは、泡瀬干潟でみられるカニの代表格。直径は1センチほど。干潮2時間ほど前から、群れをなし、「潮が引くのを追いかける」ように、前に前に進みながら“砂だんご”の丘を無数につくっていきます。

 「泡瀬干潟の観察は春先が一番いい。アーサ(あおさのり)の“緑のじゅうたん”が広がります」

 世界でも沖縄だけにしかいないのが、緑藻類のクビレミドロです。近い将来絶滅の危険が極めて高い(絶滅危惧〈きぐ〉1A類)とされ、沖縄でも泡瀬を含む3カ所でしか見られません。12月に発芽、糸状の藻体が集まり、3月ごろには直径3センチほどの塊(群体)をつくります。

 「僕らは『海のマリモ』と呼んでいます」

 泡瀬干潟は、泥、礫(れき)、砂の干潟が入り交じり、浅海域にはサンゴや海草が群生する広大な区域が存在します。この底質と地形が、泡瀬干潟の生物多様性を保障しているといわれています。

 学術的にも貴重な地です。「(海草の)ウミヒルモ類は2種しかいないと言われていましたが、泡瀬でホソウミヒルモが発見されたのをきっかけに、一気に6種になりました」

 泡瀬干潟の絶滅危惧種は170種以上。日本では沖縄にしか生息しないトカゲハゼが代表的です。干潟の保全を目的としたラムサール条約に登録させる運動が市民団体によって進められています。

■着工後にも新種

 干潟の沖に目を移すと重機がせわしなくアームを動かし、大型トラックが往来しています。

 「東部海浜開発事業」。国が浚渫(しゅんせつ)土砂の捨て場として泡瀬干潟・海域187ヘクタールを埋め立て、市や県が「海洋リゾート地」を造る計画です。現在、一期工事(96ヘクタール)が進行中で、すでに70ヘクタールの護岸が完成。内側にはリュウキュウキッカサンゴなどが生息していますが、生き埋めにされようとしています。

 「埋め立てが着工されて以降も、泡瀬干潟では10種以上の新種が発見されています。こんな場所は世界のどこにもありません」

 新種の名称には、干潟の保全にかかわる研究者の「思い」が込められているものがあります。例えば、「ザンノナミダ」という貝。「ザンは沖縄の方言でジュゴンのことです。ザンも暮らせる泡瀬の海が埋められて、ザンが悲しみの涙を流している、という意味なのです」


 泡瀬干潟埋め立て裁判 泡瀬干潟埋め立て・開発事業をめぐり市民らが市長と県知事に事業への公金支出の差し止めなどを求めた裁判の控訴審判決が10月15日にあります。一審那覇地裁は「事業に経済的合理性はない」として以後の公金支出を差し止めましたが、市・県が控訴していたもの。前原誠司国土交通相(沖縄担当大臣)は同事業について“1期中断、2期中止”の意向を示しており、控訴審判決の行方が注目されます。



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