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2009年9月28日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

労働組合の力で会社と交渉

残業代70万 支払わせた

パティシエだって労働者


 「ケーキを作るパティシエ(菓子職人)だって労働者」―。千葉県内のケーキ店で働いていた野田みのりさん(21)=仮名=。個人で加入できる労働組合の仲間とともに団体交渉をして70万円の不払い残業代を勝ち取りました。「生きててよかった、とやっと思えた」と振り返ります。(染矢ゆう子)


 3歳からの夢だったパティシエの仕事。兄の誕生日ケーキを作る母親の姿を見て、「誰かを幸せにするケーキをつくりたい」という夢がありました。

立ちっぱなし

 しかし、実際に働き始めたお店は―。午前5時ごろから午後8時30分まで毎日14時間労働。午後3時、ひどいときは5時まで休憩はなく、何も食べられません。

 1時間の休憩を除いて、ずっと立ちっぱなし。働きはじめてしばらくして右腕がしびれ始め、次第に両手がしびれるようになりました。

 週に1日の休みはひたすら寝て過ごし、友人と会うことを避けました。会ってグチを話したら、「職場に行けなくなってしまうのが怖かった」からです。

 一年で最も忙しいクリスマスを過ぎた昨年12月29日の朝、みのりさんに合わせて毎朝、午前4時30分に起きてくれていた母親が「休みな」と声をかけてくれました。母親の言葉に涙があふれました。

 結成時から加入していた労働組合、千葉青年ユニオンの神部紅委員長(日本民主青年同盟千葉県委員長)に「やめたいんだけど、どうしたらいい?」とメールを送りました。

 高校生のときから相談相手だった神部さんは、その日のうちに来てくれました。「彼女は『私がやめたらほかの人に迷惑がかかる』っていうんです。優しいですよね。どんな働き方をしてるのか聞くと有給休暇がないとか残業代不払いなど違法がたくさんある。『会社と交渉してみない』と相談したんです」(神部さん)

「大変だね」で終わらない。「ではどうするか」それが組合

9カ月で80万

 昨年4月から9カ月間の不払いの残業代を計算すると80万円を超えました。

 「これまでの手取りは残業代が1万円ついて月12万円。自分がどれだけ損していたか、知りました。団体交渉は組合員が1人であっても申し込めて、会社は拒否できないことも知らなかった」とみのりさん。

 初めての団交を会社に申し込みました。最初は「法律を守るとお店がつぶれてしまう」といっていた会社も、団交を重ねるなかで問題を認め、残業代を70万円払うことで合意しました。

 「団体交渉の中で、自分の働き方を法律にもとづいて見つめなおせた」とみのりさん。

 「働き始める前に、労働者は労働基準法などでこんなに守られています、と教えてほしい。友達との話だと『大変だね、おたがい』で終わる。ユニオン(労働組合)の仲間と話したら、『じゃあどうするか』となる。働き始めたらユニオンですね」


美容師や調理師も

 パティシエだけでなく、美容師、調理師など、「修行」と称した師弟制度がつよい業界でも、労働組合の要求で残業代が次々支払われています。

 大手美容室チェーンの「Ash(アッシュ)」では、一人の勇気ある訴えで338人の全従業員に対して約4800万円の残業代が支払われました。ちゃんこ鍋店「Chanko Dining 若」の元社員が訴えていた裁判では、6人に約2600万円の支払いを命じる判決を京都地裁が出しました。


労働者の酷使は業界にも会社にも損失ですよ

ある日の団交ダイジェスト

 社長 この業界って言うのは、修行を目的とした業界。本人にも採用の時に伝えて、同意納得のうえで就労してもらっている。残業代として出せる額は、月2万円程度。

 組合 労働基準監督署にいえば、すぐ労基署は踏み込んで、不払いの賃金支払い命令が下されるはず。労働者を1日8時間、1週間に40時間以上働かせてはいけないってのは、労働基準法で強制的なしばりがあるんです。

 社長 みたいですね。すごいですね。労働基準法って。ただこの業界も長い歴史があるんで、(労働基準法には)疑問です。

 組合 パティシエをめざし夢をもって入ってきた人たちが体を壊してやめていくのは、業界にとっても、企業にとっても損失。労働基準法はそういう社会をつくらないためにできた最低限のルールです。

 社長 この業界では技術をもった段階で給料が上がる。何もできない人に払えない。

 組合 会社は人を育てる義務があります。

 社長 ずっと勤めてくれるのかもわからない。ほとんどの人がドロップアウトする。

 組合 やっぱり過密労働、長時間労働だからじゃないですか? 長年そういう働き方を強いてきたら企業そのものが地域で成り立たなくなりますよ。


お悩みHunter

家事分担、彼にどう言えば

  結婚して半年。2人ともフルタイムで働いています。いっしょに暮らし始めたら、家事は私に任せきりの状態です。私より早く帰っていても、外に干した洗濯物すら取り込んでくれません。私が注意して、しぶしぶ取り込む始末。そんなことが2度、3度と続き、私は爆発寸前です。彼にどう言ったらわかってもらえるでしょうか。(23歳、女性)

なんなら一度爆発もいいかも

  どうもすいません。

 思わず頭をさげてしまいました。

 私も彼と同じでした。部屋を片付けないし、フトンはたたまない。毎日「フトン! フトン!」と妻に言われてたたんでいます。

 こんなとき、私は心の中で「どうせ夜になればまた出すんだから、このままの方がたたむ手間も出す手間も省けていいじゃん」などと勝手な言い訳を考えています。

 これはあわよくば家事をやらずにすまそうという面倒くさがり屋の典型的な思考、というか言い訳です。

 一人で暮らしているときならまだしも、一緒に暮らしているわけですから、お互い気遣って生活できるように努力しないといけませんよね。

 彼は、けっしてあなたに対して優しくなくなったわけでも愛情がなくなったわけでもありません。

 彼はまだ結婚前の生活習慣から抜け出せていないのかもしれません。粘り強く注意し、話し合っていけばきっと変わると思います。

 なんなら、一度爆発してもいいかもしれません。

 不満はためこまず、そのつど2人で話し合って解決していくようにしましょう。

 将来子どもを授かる前には、きちんとしてもらいたいですね。このままでは手のかかる“子ども”が2人になってしまいますから。

 率直に彼に話してみてはどうでしょうか。

第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。



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