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2009年9月6日(日)「しんぶん赤旗」

ぜんそく被害 依然深刻 大阪で調査

増える患者 減る収入

通院我慢し悪化 在宅酸素を中断

「せめて医療費無料に」


 20年前に「公害は終わった」として公害指定地域が解除され、新規公害患者の認定は打ち切られましたが、大阪府では大気汚染による公害患者が増えつづけ、健康や仕事に深刻な影響を及ぼしていることが患者団体などの実態調査で明らかになりました。

 実態調査に取り組んだのは、昨年11月に発足した「あおぞらプロジェクト大阪」です。大阪から公害をなくす会、大阪公害患者の会連合会、大阪府保険医協会、大阪民医連、大阪労連、各地域社保協など18団体、12地域組織、個人が参加。


 昨年11月、アンケートはがき付きの「ぜんそく被害実態調査」への協力を訴えるチラシ25万枚を作成し、12月から交通量の多い国道43号沿いの大阪市の西淀川、此花、福島、大正、西成の各区で全戸配布。街頭でも宣伝し、配布しました。

 「協力する」と回答した人に送付した「ぜんそく被害実態調査票」が347人から寄せられ、認定患者や大阪市や東大阪市の小児ぜんそく医療費助成制度で救済されている人、無症状の人を除外した、230人の回答を集計しました。

非正規では56%

 特徴的なのは、就職や収入に影響を及ぼしているという点です。病気が原因で収入が減ったことがあるかとの問いに25・7%の人が「ある」と答えました。「正社員だったが退職へ。全額減りました」(30歳女性)という、収入が途絶えたケースも。派遣社員、パートなど非正規雇用の人の56%以上が「減った」と回答しています(表)。「日稼ぎ労働が多く、収入がストップした。一家心中しようと思った」(73歳女性)、「パートに行っていたので(月収が)半分ぐらいになったことも何回もある」(65歳女性)と悲痛な声が寄せられました。

 「一度発作を起こし病院へ行くと7000〜8000円の医療費がかかるので我慢してこじらせて、結局、入院で多額の医療費がかかり、仕事も休んで莫大(ばくだい)な損をして後悔ばかり」「月8000円の在宅酸素を中断した」など医療費が高いために十分な医療を受けられない状態にあるとの回答も多数でした。

川崎・東京実施

 新規の公害認定を打ち切った1988年以降、公害認定患者は当然、減少しています。しかし、「公害は終わった」といえる状況にはありません。病名別の発症時期(複数回答)について56%が20年以内に発症と回答しています。NO2(二酸化窒素)の環境基準0・06ppmを府内全域がクリアしても、子どものぜんそく被患率は増加しています。学校保健統計によると2006年の大阪市のぜんそく被患率は1988年比で、小学校で1・83倍、中学校で2・47倍、高校で3・82倍となっています。

 川崎市では07年1月から、東京都では08年8月から、全年齢の気管支ぜんそく患者に医療費助成を実施しています。

 15歳以上の患者も市独自で救済している大阪・吹田市のデータを参照すると、15歳未満と15歳以上の患者はほぼ同数となっており、府内の未救済患者を推計約3万人とみています。

 あおぞらプロジェクト大阪事務局長の中村毅さんは「『せめて医療費だけでも無料になれば』という願いは切実です。15歳程度で医療費助成を切られるのは現状に合っていない」と府、各自治体の対策が必要だと指摘。ぜんそくのないきれいな空気を取り戻すとともに、未認定・未救済の患者に対し、全年齢にわたって医療費患者負担分を助成する新たな医療費助成制度をつくること―を府知事、府議会に要望する署名に取り組むことにしています。

 今月9日には、大阪民医連で実態調査報告会を開催し、今後の取り組みについて意見交換をおこないます。

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