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2009年8月28日(金)「しんぶん赤旗」

正答率の地域差固定

全国学力テスト結果公表


 文部科学省は27日、4月に実施された今年度の全国学力・学習状況調査(全国いっせい学力テスト)の結果を公表しました。1、2年目と同様に、今回も正答率の高低について地域差が固定している傾向が続いています。

 テストは小中とも国語、算数・数学の2教科で、知識を問うA問題と活用力を試すB問題に分けて実施。調査当日に参加したのは、小6、中3あわせて約223万人でした。

 都道府県ごとに集計した公立校の平均正答率の差は、もっとも大きかった中3数学Bで、19・8ポイント開きました。最小の小6国語Aでも11・0ポイントです。

 都道府県別正答率は各教科とも、前回上位をしめた県が今回も上位をしめ、前回最下位の県は今年も最下位でした。

 一方で、小6で下位から順位を上げた県がありましたが、調査を担当する同省の岩本健吾参事官は、「順位競争が目的ではないが、正答率が低い県はいっそう努力してほしい」と、学力テスト結果による競争を露骨にあおりました。

 同日、全日本教職員組合(全教)は、競争をあおり、子どもたちと教育への悪影響をもたらす学力テストの中止を求める談話を出しました。

 小森陽一・東京大学大学院教授など7氏の共同による学力テストの中止を求めるアピールには、6952人が賛同しています。

百害あって一利もない

 全日本教職員組合(全教)教育文化局長 今谷賢二さんの話 3年目を迎えた「全国いっせい学力テスト」の結果は、あらためて「悉皆(しっかい)調査で実施する必要がない」ことを示しました。「算数・数学の問題のとき方がわからないとき、あきらめずにいろいろな方法を考える児童生徒、算数・数学の授業で、公式や決まりのわけ(根拠)を理解しようとする児童生徒の方が、正答率が高い傾向」という結果分析が、58億円もの巨額の税金を使って調べなければわからないことなのか。大阪のように、競争を激化させることを意図した市町村別結果の公表が行われれば、弊害はいっそう大きなものになり、百害あって一利もない学力テストになります。

 「貧困と格差の広がり」が子どもと教育に大きな影響を与えているもとで、教育行政は何をすべきなのか、問われています。税金を子どものために、教育の充実のために使ってほしいというのが国民の声ではないでしょうか。

なんのためにやるのか

 「結局、なんのためにやるんですか?」―記者から鋭い質問が飛びます。答えられない文部科学省の担当者。全国いっせい学力テストの結果公表にあたっての記者会見でのことです。3回目となる全国学力テストの矛盾が改めて浮き彫りになりました。

 「上位の県が固定している。順位があがった県をどう分析しているのか」などの質問に、「経年的な分析はできない」というのが文科省の答えです。昨年は全体として問題が難しく、分量も多かったといいます。昨年度より今年、全体にわたって正答率が上がったことをどう見るか、単純に比較ができないのは明らかです。そのようなテストなら、毎年、すべての小中学生に実施する意味はどこにあるのか。「たとえば、一次関数を理解しているかどうか、定着度のどこに課題があるのかを調べる」といいます。しかし、そうしたことならすべての小中学校でテストを実施する必要はありません。文科省の担当者からは、どうして全国のすべての小中学校を対象にした悉皆(しっかい)調査でなければならないのか、説得力のある回答は最後までありませんでした。

 結局、いっせい学力テストのねらいは、すべての小中学校をランク付けするためだとしかいいようがありません。

 一人一人の子どもにとって、その子の力が伸びているかどうかをその時々に評価することは大切なことです。それは、担任の教師が目の前の子どもたちに行うテストで十分であり、全国いっせい学力テストのようなものは、子どもたちにとっては意味がありません。弊害ばかりの学力テストは一刻も早く中止するべきです。(荻野悦子)


 全国いっせい学力テスト 2007年度から毎年4月に全国の小学6年生と中学3年生を対象に文部科学省が実施。採点、分析などにかかる費用は約58億円に上ります。文科省は、都道府県には市町村別の結果を公表しないよう求めていますが大阪府、秋田県などが昨年、開示や公表に踏み切り、競争教育に拍車をかけています。



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