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2009年8月18日(火)「しんぶん赤旗」

政治を大もとから変える党 暮らし・平和守る「二つの旗印」

日本記者クラブ主催の6党党首討論会

志位委員長の発言


 日本記者クラブ主催で17日に開催された6党党首討論会。志位和夫委員長の発言は、日本の政治のゆがみを大もとからただし、政治を前にすすめる日本共産党の存在意義を浮き彫りにしました。ほかに麻生太郎・自民党総裁、鳩山由紀夫・民主党代表、太田昭宏・公明党代表、福島瑞穂・社民党党首、綿貫民輔・国民新党代表が出席しました。


有権者に何を訴えるか

「国民が主人公」の日本を
願いこぞって日本共産党に

写真

(写真)発言する志位和夫委員長=17日、日本記者クラブ

 党首討論の第一部では、各党党首が、今回の総選挙で有権者に一番訴えたいことを2分間で表明しました。

 麻生氏と太田氏は自公政治の反省は一言もなく、「景気対策最優先」や「安心社会の実現」「生活を守る」などと訴え。安全保障について「安全保障の基本がふらふらしていては日本の安全を守ることはできない」(麻生氏)と民主党をけん制しました。

 鳩山氏は「官僚に丸投げした政治が天下り・渡り天国、ムダづかい社会にしてしまった」と官僚批判を展開し、「官僚任せの政治に終止符を打つ」と述べました。

 福島氏は「生活再建」、綿貫氏は「郵政民営化見直し」を訴えました。

 志位氏は次のように述べました。

 志位 こんどの選挙で私たちはまず、自民、公明の政権を退場させよう、そのために自公政権と真正面から対決してきた日本共産党を伸ばしてください、と訴えています。

 同時に、自公政権を退場させたあと、それに代わってどういう新しい政治をどうつくるのか、二つの旗印を掲げております。

 第一に、国民の暮らしと権利を守る、「ルールある経済社会」をつくろうということです。

 雇用問題では、労働者派遣法を抜本改正して、雇用は正社員が当たり前の社会をつくるなど、人間らしい労働のルールを提案しております。

 社会保障では、後期高齢者医療制度は撤廃する。高齢者と子どもの医療費は、国の制度として無料にする。年金、医療、介護、障害者福祉など、あらゆる分野での拡充を提案しております。

 財源は、軍事費削減を含めムダ遣いの一掃と、大企業・大資産家への応分の負担でまかない、消費税増税には絶対反対を貫きます。

 第二は、憲法9条を生かした平和外交への転換です。

 今年4月、チェコのプラハでオバマ米大統領が「核兵器のない世界」を呼びかけました。私は、大統領に対して、「あなたの演説を歓迎します。ぜひ核兵器廃絶を正面の主題として国際交渉を開始してください」と要請する書簡を送りました。そうしましたら、先方から「あなたの情熱をうれしく思います」という返書が届けられました。ぜひ、「核兵器のない世界」をという声を、被爆国・日本で上げるために力をつくしてまいりたいと思います。

 私たちは、財界中心、日米軍事同盟中心という政治のゆがみを大もとからただして、憲法に書いてあるとおりの国民主権の国、「国民が主人公」の日本を目指しております。

 どうかその願いを日本共産党に託していただきますよう、みなさま方の大きなご支持をよろしくお願いします。

「自公政権後」どうする

志位氏「財界主導」の政治と決別する意思はあるか

鳩山氏 (答えず)すべて財界の方々の意見を封印するつもりはありません

 各党党首が相手を指名して質問する討論で志位氏は、自公政権退場後に国民の関心が向かっているとして、鳩山氏に政治の根本にかかわることから質問しました。

 志位 この選挙は、自公政権を退場させた後に、それに代わるどういう新しい政治をつくるのかが、すでに最大の焦点となっています。国民の多くの関心も、自公政権後の政治をどうするかに向かっていると思います。そこで私は、鳩山さんに二つお聞きします。

 一つは、鳩山さんは、「官僚主導」の政治から脱却することを、最大の主張に掲げておられます。確かに、あしき「官僚主導」と決別することが重要であることは、論をまちません。同時に私が聞きたいのは、鳩山さんが「財界主導」の政治についてどう考えているかについてです。国民の暮らしを守ろうとすれば、どんな問題でも「財界主導」の政治にぶつからざるをえないからです。

 たとえば、なぜ日本に「首切り自由」の不安定雇用が広がり、「働く貧困層」が広がったのか。1995年に日経連が「新時代の『日本的経営』」という雇用戦略を発表したことが、99年の派遣労働の原則自由化、2004年の製造業への解禁をはじめ、労働法制の規制緩和の出発点となったことは事実であります。

 それから、なぜ社会保障がここまで破壊されたのか。02年度から始まった、年間2200億円の社会保障費削減も、「経済財政諮問会議」のメンバーだった日本経団連会長が、「社会保障については大胆な制度改革を前提として、要求基準を定めるべき」と号令をかけたことから始まったことも事実です。

 さらに、消費税増税を政府に要求し続けてきたのも財界です。03年1月に発表された日本経団連の提言は、「消費税率16%」を、「法人税の大幅引き下げ」とセットで要求しています。

 こうした一連の事実に照らしたら、国民の暮らしを守ろうとすれば、「財界主導」の政治から脱却することが、私は不可欠だと考えます。鳩山さんと民主党に、自公政権のもっとも悪い特質の一つである「財界主導」の政治と決別する意思があるのかどうか。端的にお答えください。

 鳩山 財界の中にも、当然いろんな知識を持った方々もおられるし、今日の経済をリードしてこられたなかで、さまざまな知恵というものもあることは事実だと思います。そのことを認めながら、官僚任せをやめたから、あとは財界任せになるとかいうような発想は、一切持つつもりはありません。

 財界のみなさま方のなかには、今までの産業界の仕組みのなかで、必ずしも未来志向ではないような方々の意見もあると思います。

 従いまして、すべて財界の方々の意見を封印するつもりはありません。いろいろと聞くことは大事だとは思っておりますが、いちばん大事なことは、政治がもっと主導権を握って、国民の期待にこたえられるように動かしていくこと、そのように思っております。

 志位 私は、「財界主導」の政治と決別する意思についてうかがったんですが、財界のなかにもいろいろな方々がいらっしゃると(いうことでした)。もちろん、今の日本経済を憂えて、この現状を打開しようと前向きに考えていらっしゃる方もたくさんいらっしゃると思いますが、全体としての「財界主導」の政治を打破するかについてのお答えは、定かではありませんでした。(答えを)いただけませんでした。

 この点は立場の違いがあると思いますので、ぜひ今後も議論していきたいと思います。

 ただ一言付け加えますと、やはり「財界主導」の政治から本当に脱却しようと思ったら、企業献金をやめる必要があります。この間、日本経団連が、政策要求をつきつけて、自民・民主に「通信簿」をつけて献金をあっせんする。そういうやり方とはきっぱり手を切る必要があるということを申し添えておきたいと思います。

 鳩山 企業献金は全部やめますから。

 志位 すぐにやめましょう。

志位氏 農業・コメをつぶす日米FTA交渉には入るべきでない

鳩山氏 私はまったくそう思っておりません

志位氏 コメ抜きFTAありえない

 志位 もう一問聞きます。

 今度の選挙で自公政権を退場させたら、民主党中心の政権となるでしょう。そのとき私たちは、「建設的野党」の立場、国民の願いに立って政策をどんどん提案し、「良いことは協力、悪いことにはきっぱり反対」の立場で、現実政治を前に動かすために頑張るつもりです。

 たとえば、私たちは、労働者派遣法の抜本改正、後期高齢者医療制度の撤廃、障害者自立支援法の「応益負担」の廃止、高校授業料の無償化などを主張してきましたが、民主党のマニフェストを見ますと、これらの点では方向の一致がみられます。ぜひ新しい国会で、協力して実現を図りたいと考えております。

 同時に、民主党のマニフェストを見ますと、私たちが絶対にこれは容認するわけにいかないという大問題も少なくありません。

 一つの問題にしぼってうかがいたい。それは民主党のマニフェストに、「米国との間で、自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易、投資の自由化を進める」と明記していることについてです。

 この方針は、広い農業関係者、国民に大きな不安を呼び起こしています。なぜなら、日米FTAが締結されるなら、日本の農業、とくにコメに壊滅的な打撃が与えられるからです。

 財界団体で構成された日米経済協議会が委託した試算によると、日米FTAによる関税撤廃で、日本の農業生産は激減します。とりわけコメの生産は82%も減少してしまいます。日本国民の主食であるコメが82%もつぶされる。これは日本国民の存亡にかかわる大問題といわなければなりません。

 民主党は、日米FTAに際して、「国内農業の振興を損なうことは行わない」と述べておられます。しかし、日米でFTAを締結する場合、農業とコメを除外したものがありえるでしょうか。米国側ははっきりいっています。「コメを含む農業は、日米FTAの中心になるべきだ」。「日米FTA交渉を実現するには、農業を含まないわけにはいかない」、「製造業の分野では米国はむしろ損失を受ける。日本からメリットを受けるには、農産物自由化が入っていないと難しい」。すなわち、農業とコメを除外した日米FTA交渉はありえないのです。

 日米FTA交渉には入るべきでないと考えますが、いかがでしょうか。

 鳩山 私はまったくそう思っておりません。アメリカとの付き合い方は、今までは防衛に偏っていたと思っておりますが、むしろその軸足を、より経済との間の密な関係をつくることにシフトさせるべきではないかと、そのように思っておりまして、そのなかでFTAの交渉というものを進めたらよろしい、そう思っております。

 当然、国益を守るということは、お互いに2国間で議論するときに、もっとも必要なことであります。いま、コメを開放したらどうなるか。そのときの影響が大きいことは、よくわれわれもわかっています。

 いま2国間で日本はいろいろな国とFTAの交渉をやったり、すませたりしておりますが、すべてコメや麦などの主要作物は除外されているわけです。国益を守りながら、しかし一方では自由貿易の方向に向けて、互いに経済関係を強化していこうではないかというのは、当たり前の話であります。私どもは食料自給率とか、あるいは「食の安全」とか、農村の振興というものを考えたときに、コメや麦などの主要作物を、しっかりと国益を守りながら、FTAの交渉を進めることは十分にできると思っております。

 志位 アメリカとの貿易を活発にすることは私たち、否定しておりませんが、日本に入ってくるアメリカの輸入品のうち、すでに鉱工業製品は関税が低くなっているわけですね。高い関税にしているのは農業とコメだけなんですよ。ですから、これはね、農業、コメ抜きのFTAというのはありえないと。交渉に入っていくべきではないということを重ねて申し上げます。これが出てきたら、「防波堤」となって食い止めます。

 福島氏は鳩山氏に対し、「非核三原則」の堅持と法制化の考えを質問。鳩山氏は「堅持はする。(三原則を)国是にとどめた方が(法律より)強い力を持つと思うが、法制化も検討はしていきたい」と述べました。

 民主党が「子ども手当」の財源で所得税の配偶者控除・扶養控除の廃止を掲げていることについて麻生氏が「子どものいない世帯は増税になるのでは」と質問したのに対し、鳩山氏は「増税になると予想される」と認めました。


記者の質問にこたえて

 「党首討論の風景がこれまでと違っている」。第二部の記者クラブからの質問は、麻生氏へのこんな質問から始まりました。政権党の自民党より民主党に質問が集中したからです。

日本共産党の存在理由は?

良いものには協力、悪いものには反対
日本の政治をおおもとから変える

 そのなかで各党に存在意義を問う質問が出され、志位氏には「自公政権打倒によって民主党中心の政権ができる。どちらにしても共産党の存在理由が逆に問われているのではないか」との質問が出されました。

 志位 私たちは選挙で、まさにわが党の存在理由として三つの点を押し出してたたかっています。

 第一は、今おっしゃられたように、自民・公明の政権を退場に追い込む、先頭に立ってわれわれが国民の皆さんの多くの怒りの代弁者になって、頑張る。やはりわが党が(自公政権と)正面からたたかってきた党ですから、役割を果たしたい。

 第二に、民主党政権になった場合に、それでは日本の政治を、これまでの政治と大もとから変えられるのか。先ほど私は、「財界支配」を打破できるのか、という話をうかがいましたが、やはり(民主党政権では)内政は「財界中心」、外交は「日米軍事同盟中心」という、この枠組みは変えるに至らない。そこで私たちは、先ほど冒頭に申したような、「ルールある経済社会」、あるいは「9条を生かした平和外交」、これを訴えていきます。

 同時に、民主党政権になった場合に、野党はどうなるか、と考えますと、共産、自民、公明ということになるでしょう。そのときに私たちは、「良いものには協力する、悪いものにはきっぱり反対する」。こういうしっかりした立場をもつ政党が伸びることが日本の政治を前に動かす力になるし、日本の政治を大もとから変える力になると訴え、私たちの存在意義はうんと今、うきぼりになっていると考えております。

大企業の負担増やして大丈夫か?

日本の大企業の税・社会保険料負担は独の8割、仏の7割

 志位氏に対しては、「企業の負担を増やして、結果として雇用が減ったり企業がつぶれたり、海外へ事業所が移るということも考えられる。日本は何で食べていくのか」という質問が出されました。

 志位 まず、「大企業への負担を増やして大丈夫か」という話がありました。大企業の法人税率のいわゆる実効税率だけを見ますと、(諸外国と)だいたいそろっている状況にあるんですけれども、実質的な負担をみますと、日本の場合二つの問題があると思います。

 一つは、研究開発減税などの、さまざまな優遇税制があります。もう一つは、社会保険料の負担が大変少ないという状況があります。政府の出しているデータで見ましても、たとえば、日本の自動車産業が払っている税と社会保険料の負担は、だいたいドイツの8割、フランスの7割しか払っていない。決して、私ども、大企業に負担を求めるということは無理筋の話ではないと思っております。

 もう一ついいますと、いまオバマ政権が、向こう10年間で、富裕層に100兆円の増税を求める、それから多国籍企業に20兆円の増税を求める。120兆円の財源を新たにつくって、庶民減税や、医療保険に充てるという改革をやっていますね。世界の大きな流れにもなっているわけで、私は決して無理筋ではない(と思います)。

 私たちは、そういうところでつくった財源をもって、やはり雇用をしっかり守っていく。社会保障をよくしていく。農業に充てる。中小企業に充てる。そして内需を豊かにして、日本という国がまさに土台からあたたまっていくような、そういう経済にしていく必要があると思っています。

戦後最長の総選挙の感想

有権者はじっくり考えている
もう一度、党首討論会を

 戦後最長の40日間にわたる総選挙の感想を問われ、志位氏は次のように答えました。

 志位 今、街頭で訴えておりましても、マニフェストはないんですか、とたくさんの方が聞いてこられます。ですから、有権者のみなさんが各党の主張についてよく考え、じっくり選んでいる最中だと思います。

 40日間というのは大事な期間ですので、私はぜひ、こういう討論の場をもう一回つくってもらえないか。繰り返し、こういう討論会をぜひやってほしいということを日本記者クラブにお願いしたいと思います。



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