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2009年7月30日(木)「しんぶん赤旗」

総選挙政策発表の記者会見

志位委員長の一問一答


 日本共産党の志位和夫委員長が28日に行った総選挙政策発表の記者会見のうち、記者団との一問一答部分を紹介します。(総選挙政策全文


写真

(写真)総選挙政策を発表する志位和夫委員長=28日、党本部

総選挙の訴えの基本について

 ――総選挙では何を訴えてたたかいますか。

 志位 「国民へのアピール」にあるように、自公政権退場の“審判”を、新しい日本の進路の“選択”を、審判と選択ということを私たちは訴えます。新しい日本の進路という点では、「国民が主人公」の日本、「二つの旗印」の内容を豊かに語っていきたいと思います。

高齢者と子どもの医療費無料化について

 ――高齢者医療費は過去に無料の時代があったと思いますが、高齢者の医療費が膨張して無料ではなくなったという経過があるようです。医療費の増大をどう考えるのでしょうか。また、医療費を抑制するためにどのようなことを考えていますか。そもそも、高齢者の医療費無料化を打ち出したのは初めてですか。

 志位 高齢者の医療費無料化を国の制度として打ち出したのは、(有料化以降では)初めてです。75歳以上の高齢者の医療費の無料化に必要な財源は、約1兆円となります。もちろんこの施策のためには新たな財源が必要になるわけですが、もっと大局からみれば、私たちは医療費の増大というものを、本当の意味で合理的に抑えていくためには、窓口負担を軽くして、早期診察、早期発見、早期治療ができるようにする、そのことによって元気で長生きしていただくという体制をつくることが、結果として、医療費の増大も抑えることになると考えています。この間、日本では、窓口負担をどんどん引き上げ、現役世代は3割に引き上げてしまった。3割負担という主要国では他に類のない異常に高い窓口負担としてしまった。お年寄りも無料化をやめて、1割、2割というところに引き上げてしまった。そのことによってひどい受診抑制がおこっているわけです。受診抑制によって治療が遅れ、重症化し、いざお医者さんにいったときには大変な事態になり、結果的に医療費がかさんでしまうという事態がおこっているわけです。

 もちろん、窓口負担の無料化の直接の目的は、国民の命と健康を守ることにあります。その第一歩として受診抑制が命と健康に一番直結してくる子どもと高齢者の医療費の窓口負担を無料にすることからはじめようということで、この政策を打ち出しました。そのことによって、結果として合理的な意味での医療費の抑制にもつながると考えています。窓口負担を重くすることで医療費を抑制するという考え方は、国民の命を守るうえで政治としてとってはならないことだし、真の意味での医療費抑制にもつながりません。

対米関係についての民主党の姿勢について

 ――「自主・自立の平和外交」という点について、民主党中心の政権ができる可能性が大きいと言われましたが、民主党は最近、インド洋の給油活動の方針を変更したり、地位協定についても、改定というところから、改定を提起するという方針に変更したりしています。民主党の外交政策をどう見るのか。また、それと共産党の政策はどう違うのか。また、対米政策についてはマニフェストに書かれているが、対アジア、中国との関係は記述がないが、重要視していないのですか。

 志位 後者から言うと、中国やアジアとの外交関係を、日本共産党として大いに重視していることは言うまでもありません。日中関係については、11年前(1998年)に日中両党関係が正常化したおりに、不破哲三委員長(当時)が訪中しまして、当時の江沢民主席、胡錦濤国家副主席と会談して、「日中関係の5原則」という提起をしました。

 「日本は、過去の侵略戦争についてきびしく反省する」「日本は、国際関係のなかで『一つの中国』の立場を堅持する」「日中は、平和共存の関係を守り抜く」「日中は、どんな問題も平和的話し合いで解決する」「日中は、アジアと世界の平和のために協力しあう」という、「5原則」ですが、これらを提起し、基本的に合意を得るということがありました。11年間を振り返って、この立場が大切だと痛感しますし、今後も基本の立場として、これを堅持していくことが重要だと考えています。

 民主党の対米姿勢について言いますと、民主党がインド洋での自衛隊派兵の問題について、これまで国会で延長反対、即時撤退という立場であったものが、今度、立場の変更があったと思います。これは、国民のみなさんに、どうしてそういう変更があったのかについての説明が必要だと思います。

 日米地位協定についても、改定に踏み込む姿勢がだいぶ後退したような印象を受けます。地位協定の問題は、米軍犯罪の問題の一つをとってみても、治外法権的な特権を米軍にあたえる非常に重大な問題です。これも、どうしてそういう姿勢の後退がおこったかについての説明が必要だと思います。さらに、沖縄の米軍基地の問題、名護市・辺野古沖に建設が予定されている米海兵隊の基地問題についても、具体的には言及がないようです。そういう点についても説明が必要だと思います。

 そうしたことの根本に何があるのか。昨日発表された民主党の「マニフェスト」を拝見しますと、外交の最後のところに、「緊密で対等な日米同盟関係をつくります」という一文があります。「日米同盟関係」というのは、日米安保条約=日米軍事同盟をさしていると思います。しかし、日米安保体制というのは、その根本の成り立ち、仕組みからして、「対等」ではありえないのです。日本が基地を無条件に米軍に貸し、日本を米軍の戦争の根拠地として提供し、米軍の指揮下で自衛隊と軍事共同をおこなうという、文字どおりの不平等条約が日米安保体制なのです。ですから、それを「緊密」にする――強化するという根本のところが問題であって、その根本から、いまいわれた動揺的なさまざまな態度もあらわれていると思います。

 私たちは、安保条約を条約の規定(第10条)の定めどおり、通告によって廃棄して、日米軍事同盟の体制から抜け出していく、そしてそれに代えて、日米友好条約をむすぶということを提案していますが、そういう立場にたってこそ、本当に対等・平等の、そして友好の日米関係がつくれると考えています。

財源問題について――歳出・歳入の改革によって12兆円           

 ――財源の問題について、ここまで詳細に踏み込んだのははじめてですか。

 志位 そうですね。いつも財源論については具体的な提案をしていますが、今回はとくに財源論そのものが重要な争点になると考えて、党として厳密に試算もして12兆円という数字を出しました。国民のみなさんに責任をもって政策を提起する以上は、財源の厳密な精査が必要です。この「基本政策」に盛り込まれた新しい施策を実行しようとすると約12兆円の新たな財源が必要ですが、歳出・歳入の改革によっていくら捻出(ねんしゅつ)できるのかということをかなり厳密にやりまして、12兆円は可能だという結論になりました。財源の問題については、責任ある立場が今度の選挙では問われるでしょう。それは与野党ともに問われるでしょう。そうしたことをふまえて踏み込んで書きました。

民主党の「マニフェスト」――四つの根本的な問題点

 ――「総選挙政策」では「民主党中心の政権ができる可能性が大きい」といっていますが、民主党の「マニフェスト」を意識してマニフェストをつくったのでしょうか。民主党のマニフェストにはなくて、共産党のマニフェストにはある、「ここを読んでもらいたい」という政策はあるでしょうか。

 志位 民主党の「マニフェスト」を特に意識したということはありません。私たちが発表したものは、すでにこれまで積み重ねてきた政策体系を、今日の情勢にふさわしく、また国民要求もふまえて、発展させたというものです。

 日本共産党(の総選挙政策)にあって、民主党の「マニフェスト」にないものは何かというご質問ですが、そうすると根本的な問題になってきますので、昨日発表された民主党の「マニフェスト」を読んだ私の感想を話させていただきたいと思います。

 政策の個々の問題では、民主党の「マニフェスト」の項目の中で、日本共産党の政策と一致する点がいくつか見られます。たとえば後期高齢者医療制度の廃止などです。個々の問題では、協力可能な点があります。

 そのうえで、私たちから見て根本的な問題点が四つほどあると感じていますので、率直にのべます。

 第一は、民主党の「マニフェスト」の全体を通して、自公政治の行き詰まりの根っこにある財界・大企業中心の政治のゆがみ、あるいは日米軍事同盟中心の政治のゆがみ、これを正そうという立場が見られないという問題です。「官僚支配の打破」ということが言われています。しかし「財界支配の打破」、あるいは「米国支配の打破」、この立場が見られない。これは根本的な問題だし、根本的な立場の相違です。

 第二は、第一の問題と密接にかかわることですが、民主党の財源論の問題です。細部の問題の吟味も必要ですが、大きな問題として、私は、民主党の財源論は二つの分野を「聖域」にしていると思います。一つは、軍事費です。米軍への「思いやり」予算、グアムの米軍基地建設などへの3兆円の支出の問題、こういう分野への切り込みが見られません。ここが「聖域」にされています。いま一つは、大企業と大資産家に応分の負担を求めるという立場が見られません。この二つの分野が「聖域」とされている。私たちはこの二つの分野にこそメスを入れる必要があると考えています。ここにメスが入らなかったら、国民の立場にたった財源論の答えが出てきません。この二つの分野を「聖域」にしますと、私は必然的に消費税の値上げという方向に行かざるを得ないと思います。現に、この問題でも、鳩山代表は「4年間は消費税増税論議そのものをやらない」といっていたのに、立場を変えて、「議論は行う」と言い出しています。

 第三は、憲法の問題です。民主党の「マニフェスト」では、憲法についてはあまり触れていないのですが、最後に重大な表明があります。「民主党は2005年秋にまとめた『憲法提言』をもとに、今後も国民の皆さんとの自由闊達(かったつ)な憲法論議を各地で行ない……慎重かつ積極的に検討していきます」と書いてあります。それではこの「憲法提言」はどういうものかというと、「憲法に、何らかの形で国連が主導する集団安全保障活動への参加を位置づける」とあるのです。「国連が主導する集団安全保障活動」には、軍事的な対応も当然含まれてきます。それへの参加を「憲法に位置づける」ということになりますと、憲法9条の改変になるわけです。これを「もとに」して、この問題に取り組むということは、9条改憲への志向を鮮明に打ち出したものにほかなりません。こうした方向に対しては、私たちはきびしく反対していくことは言うまでもありません。

 第四は、民主党の「マニフェスト」の「5つの約束」の「ムダづかい」という項目のなかに、「衆議院の比例代表定数を80削減します」とあることです。これは絶対に私たちは容認できないものです。現行制度の下で国民の民意を国会に反映する唯一の制度である比例代表の定数を半分にすることになりましたら、国会は自民党と民主党でほぼ独占されてしまうことになります。これは民主主義を壊す重大な逆行として、絶対に容認できません。しかもこれが「ムダづかい」ということになりますと、比例代表の議員は、そのすべてが「ムダな議員」かということになります。私たちは本当のムダづかいというのだったら、本当に「政治が身を削る」というなら、政党助成金こそなくすべきだと主張しています。比例定数の削減は民主主義を壊す大きな逆行で容認は絶対できません。

 冒頭にのべたように、民主党の「マニフェスト」とは個々には一致するところがあります。ただ大きな問題で、以上ざっとみただけでも、四つくらいは相いれない重大な問題点があります。ですから総選挙後、民主党中心の政権ができたときには、わが党は、「建設的野党」として、国民の利益にてらして、協力すべきところは協力しますが、いまのべたような間違った方向にはきっぱり反対するという立場をつらぬいていきます。国民の暮らし、民主主義、平和を壊す逆行は許さないという立場で、がんばりたいと思っています。

沖縄の新基地建設――「たらいまわし」でなく撤去の立場をつらぬく

 ――沖縄の基地について「新基地建設に反対」とありました。名護の基地は普天間の代替だと聞いています。普天間はどうするのでしょうか。

 志位 沖縄の米軍基地の県内・国内での「たらいまわし」は私たちは絶対に反対です。普天間飛行場は閉鎖し、米軍は本国に帰ってもらうということです。1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意は、県内での「たらいまわし」を押し付けようとしました。日本共産党はこの合意に反対をつらぬきました。SACO合意をむすんで13年、基地が動かないのは、県内の「たらいまわし」の方針が破綻(はたん)したことを示しています。「たらいまわし」でなく撤去、米国に帰ってもらうというのが私たちの断固たる立場です。

 くわえて、いまの普天間基地は非常に危険な状況になっています。(宜野湾市の)伊波洋一市長からも要請を受けましたが、アメリカの基準に照らしても禁止されているはずの住宅密集地のうえが飛行ルートになっています。保育園や小学校が危険ゾーンの中にある。非常に危険な状態になっています。普天間基地は、即時閉鎖が必要だと私たちは求めています。

日米自由貿易協定(FTA)――日本農業を壊滅させるもので絶対反対

 志位委員長は、28日の記者会見終了後、さらに記者団から「民主党のマニフェストには、日米間の自由貿易協定(FTA)締結が掲げられているが、それにたいする見解は」と問われ、「米国とのFTAは日本農業を壊滅させる。絶対に反対だ。そんな道に踏み込んだら食料自給率がかぎりなくゼロに近づくことになりかねない」と強く反対する立場を表明しました。



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